日本初、城をテーマにした博覧会「お城EXPO」(12月23~25日、パシフィコ横浜)では、1/75スケールの模型で再現した現存十二天守や、日本城郭協会が保存する城絵図を公開したフロアなども歴女や城ファンなどに注目された。20枚の写真とともに見ていこう。
◆現存十二天守をイッキ見してわかる個性・違い
現存十二天守模型展フロアは、その見る人を圧倒する再現力と緻密さで、来場者たちを唸らせていた。1/75スケールの現存十二天守をモデル化した製作者は、故・大神田昭司氏。彼についてお城EXPO実行員階はこう記している。
「17歳のときに偶然見た松本城に強く惹かれ、20代半ばで目にした姫路城の絵葉書をきっかけに自己流で模型を作り始めた大神田氏は、85歳でこの世を去るまで、城郭を中心とした精細なミニチュア模型の製作に情熱を注ぎました」
「製作にあたっては現地に足を運んでスケッチや実測を行い自ら詳細な設計図を作成、やがて国立国会図書館などに収蔵されている古の城郭設計図や修理報告書なども参考にしながら精密な模型を作り続けました。なかでも姫路城の天守模型は、完成までに2年を費やしたといいます」
なんとなくできる来場者の列に並ぶと、松江城(島根)、彦根城(滋賀)、犬山城(愛知)、丸岡城(福井)、松本城(長野)、弘前城(青森)、備中松山城(岡山)、姫路城(兵庫)、丸亀城(香川)、伊予松山城(愛媛)、宇和島城(愛媛)、高知城(高知)とめぐれる。
それぞれに個性やつくりの違いがあって、城マニアじゃなくても見入ってしまう。たとえば、壁面は白漆喰を塗る塗籠の占有率も異なる。「織田信長の命により柴田勝家が甥の勝豊に築かせた」という丸岡城は、最古の建築様式といわれ、塗籠の壁面の下に煤(すす)を塗らない下見板張が、ほかの11の城と違い、異彩を放っていた。
石積みのトーンも違う。整えられた石積みの犬山城などに対し、丸岡城や弘前城は野づら積み。その粗く組まれた石のすき間からは、大雨などのさい、排水・水はけをよくし土台を支えたといわれている。
異彩を放つといえば、弘前城もそう。天守の屋根が、黒い粘土瓦が多いのに対し、こちらはグリーン調。寒冷地の温度差などで粘土製の瓦が割れてしまうという課題を解決すべく、木製などの瓦に銅板を貼り付けた銅瓦葺きが採用された。「日本の城で創建時の銅瓦が現存するのは、青森県の弘前城天守だけ」(日本金属屋根協会)。
これら現存十二天守模型に加え、フロア入口にもうひとつ、大神田氏が製作した1/100の巨大模型が置かれていた。特別出品の小田原城(神奈川県)だ。こちらは明治初期に壊されたものを復元した城で、壁面のほぼすべてを白漆喰で塗った明るいトーンが印象的。
◆五畿七道のビジュアル表現に「そうか!」
また、厳選城絵図展フロアでは、日本城郭協会所蔵の日本城郭配置図、江戸城下図、白石城図、姫路城図、松山城図、彦根城図、松本城図、吉田郡山城図を展示(複製品含む)。日本城郭配置図は、現在の都道府県のルーツとなる五畿七道が描かれていた。
五畿七道は、平安宮などの都を中心にすえた、山城、大和、河内、和泉、摂津の「五畿」と、東海道、東山道、北陸道、山陰道、山陽道、南海道、西海道の「七道」で区分けした行政区分。
日本城郭配置図には、現在の東北エリアや北関東、長野、岐阜、滋賀などが含まれる東山道が黄色に、茨城から三重まで太平洋沿いのエリアが含まれる東海道が茶色に、和歌山や四国4県、淡路島などを含む南海道がオレンジ色に塗り分けられていた。
「親子で訪れると、冬休みの宿題にもいいかも」と話すのは山梨県からのファミリー。親子たちは「かつての地名が現在のモノ・コトに使われているのがおもしろい。讃岐うどんとか、薩摩揚げとか」「ああ、大和路快速、伊勢志摩ライナーもそうか!」などと話しながら見入っていた。
この日本城郭配置図には、北海道は描かれてない。フロアスタッフは、「伊能忠敬や間宮林蔵などが測量したといわれる北海道は、明治以降の地図に記された」と伝えていた。