FIAフォーミュラE選手権の15-16シーズン第4戦がアルゼンチンのブエノスアイレスで現地6日に開催され、予選で最後尾18番グリッドに沈んだセバスチャン・ブエミが決勝で2位となる歴史的好走を披露した。優勝はサム・バードで今季初。
EVによるフォーミュラレースの最高峰シリーズの2シーズン目、昨年10月に始まった「15-16シーズン」が2カ月弱のインターバルを挟んで再開された。全戦市街地での土曜ワンデー開催を原則とし、世界各地を転戦するフォーミュラEの16年初戦(15-16 第4戦)の舞台はアルゼンチンの首都ブエノスアイレス。18台が参加して行なわれた予選では、今季2勝と好調なシリーズリーダーのブエミ(Renault e.Dams)がミスによって最後尾18番グリッドに沈むという波乱が起きた。
2シーズン目になってパワートレーンの自由開発が認められるようになり、自動車メーカーの積極的なチーム支援も顕著化するなか、ブエミとRenault e.Damsチームの組み合わせは今季ここまで最速。とはいえ、市街地コースで最後尾スタートから優勝戦線まで浮上するのは至難だ。しかし、ブエミはそれを見事にやってのける。
レース前半、ブエミは次々と前車をパスし、彼我のパフォーマンスの違いの見せつけた。フォーミュラEではレースのほぼ中間点でマシンを乗りかえることになるが、ピットイン前の時点でブエミは5番手まで進出。全車ピット作業を終えた時点で4番手となり、その後も2台をパスして首位のバード(DS Virgin Racing)に迫る。
ポール発進から逃げるバードと、フォーミュラEのみならずモータースポーツの歴史にも残ろうかという猛追劇の完遂に向けて攻めるブエミ。その戦いは35周レースの終盤まで続いた。そして最後まで粘り切ったバードが0.716秒差でチェッカーを受け、今季初勝利をポール・トゥ・ウインで飾った。
優勝したバードのコメント
「今季、我々は(シトロエンのブランドである)DSという偉大なマニュファクチャラーとともにハードワークをこなしている。今日のマシンの仕上がりは素晴らしかったよ。前戦から疲れ知らずの働きをしてくれた仲間たちのおかげだ」。
勝ったバードの走りは素晴らしかった。だが、この日の主役は16台抜きのブエミだ。アクシデントによる大量リタイア等のラッキーがあったわけではなく、ストップ車両回収のために1度あったセーフティカー導入もそれほど有利に働いたとは考えられない状況。つまり、ほとんどがコース上での直接のオーバーテイクによるポジションアップだった点が歴史的好走と呼べる根拠である。最後に優勝者バードとの熾烈な攻防が見られた点もまた、レースとして最高だった(バードにも拍手だ)。
優勝までは届かなかったが、ブエミとRenault e.Dams(チーム首脳は元F1王者アラン・プロストら)が草創期のフォーミュラEにおける現時点での絶対最速ランナーであることをあらためて証明した一戦。将来、EVレースが大きく発展していった場合には、このレースが語り継がれる伝説となる可能性さえある、そんな快走であったといえるだろう。
2位ブエミのコメント
「チームに対して申し訳なく思うところがあるよ。だって、今日のマシンの出来を考えれば、最大限の成果を引き出せたとはいえないわけだからね。ただ、レース自体は素晴らしかった」。
予選のミスがなければ、かなりの確率で圧勝できただろう手応えを証明しただけに、ブエミにとっては「いいマシンを用意してくれたチームに申し訳ない」という意になるのも頷けるところ。はたして今後も彼がシリーズを席巻し続けるのだろうか、あるいは他の選手の巻き返しがあるのか、楽しみになってきた。
なお、ブエミは今季もWEC(世界耐久選手権)でトヨタのLMP1マシンのステアリングを握り、中嶋一貴らと組んで走るドライバーである。こちらでの活躍にも期待がかかる。
フォーミュラE 15-16 第4戦アルゼンチンの3位はL.ディ・グラッシ(ABT Schaeffler Audi Sport)。15-16シーズンのドライバーズチャンピオン争いではブエミが80点で首位、これに1勝を含む4戦連続3位以内のディ・グラッシが76点で続き、バードが52点で3番手。さらに4番手には日本での活躍でもおなじみのL.デュバル(Dragon Racing)が32点でつけている(デュバルは第4戦6位)。
シリーズは今年7月上旬までの全11戦。次戦第5戦はメキシコシティで3月12日に開催される。