弾道ミサイル「ピースキーパー」部品 NASA施設で解体・再使用プログラムを開始

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弾道ミサイル「ピースキーパー」部品 NASA施設で解体・再使用プログラムを開始
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NASA ジョンソン宇宙センターの付帯施設、ニューメキシコ州ホワイトサンズ試験施設では、大陸間弾道ミサイル「ピースキーパー」第4段の安全化と再使用プログラムが始まっている。今後4年かけて、44基の処理を行うという。

「LGM-118A Peacekeeper(ピースキーパー)」は、1986年からアメリカ空軍が配備していた大陸間弾道ミサイル。2003年に第二次戦略兵器削減条約(START-II)により退役となった。固体推進剤を搭載した第1~第3段はすでに衛星打ち上げ用の小型ロケット、「ミノトールIV」に転用され、オービタル・サイエンシズ社が運用している。液体推進剤を搭載した第4段(ポストブースト推進システム :PBPS)は米ユタ州のヒル空軍基地で保管されていたもので、この3月からニューメキシコ州のNASA、ホワイトサンズ試験施設で解体と部品、推進剤などの再使用が開始された。

ロケットダイン製のPBPSは、ミサイル弾頭に搭載された10個の再突入体を目標位置まで運ぶ最終段となる。直径2メートル33センチ、高さ1メートル6センチの大きさでアルミの正三角形のアイソグリッド構造ととなっており、ヘリウム加圧システム、推進剤貯蔵部、推進剤多岐管、1軸エンジンと姿勢制御エンジンから構成されている。2液推進剤推進システムは、自然点火性のモノメチルヒドラジンと四酸化窒素を使用し、各0.311キロニュートンの8機の姿勢制御エンジン(ACE)と11.4キロニュートンの1軸エンジン(AXE)を搭載している。

ホワイトサンズ試験施設では、2007年から2009年にかけて、これまでにもPBPS解体の実績がある。無人処理設備や毒性の強い推進剤を貯蔵する設備などが整っているため、解体処理施設に選定された。今後は圧力タンクからのヘリウム抜きとり、推進剤の抜きとり、推進剤タンクの浄化や火工品の消耗、バッテリー放電、フロンの抜き取りとリサイクルといった一連の作業を行う。

2009年10月には、NASAの有人宇宙開発計画 コンステレーション計画のために開発されていた「アレス 1-X」ロケットの試験に解体したPBPSの部品が利用された。コンステレーション計画が2010年に終了となり、アレス 1ロケットの開発も終了となったが、ミサイル部品をロケットのロール角の回転を制御するシステムの試験に使用したことで、2年間に1000万ドルのコストダウンが可能になったという。解体処理されたPBPSの部品や推進剤などは、今後のロケットの打ち上げ試験などで第2の役割を果たすことが期待されている。

《秋山 文野》

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