先端材料技術展というからには、まだクルマには使われていないような最先端のマテリアルも並んでいるだろうが、高性能なモデルに使われている素材や製法を代表例としてアピールしているところもあるはず。
カーボンボンネットとレクサス『LFA』のパネルを展示しているブースを発見。ブースの中央には何やら複雑な機械がドンと展示されているが…。
高圧樹脂注入装置を展示していたのは、愛知県のポリマーエンジニアリング社。同社はウレタン樹脂の射出成形装置を長年手がけてきた企業で、クルマのバンパーやダッシュボード、シートクッションなどを製造するメーカーに機械を収めている。最近はこれまでの技術を活かし、ウレタン以外の樹脂が扱える装置もある。
それがRTM製法のための樹脂注入装置なのである。RTMというのはFRPやCFRPを使った成型法の一種で、金型でカーボンファイバーを挟み込み、樹脂を注入することで成型する技術。
これによってボンネット1枚分の大きさでも1分以内という速さで樹脂を注入できるそうだ。
LFAの部品製造に使われているのは、同じ樹脂注入装置でも低圧のものだというが、エポキシ樹脂と硬化剤を混合させて注入するというプロセスは同じ。ちなみに同社の樹脂注入装置は、LFAのカーボンモノコックボディでも、大きく平滑な造形が求められるバスタブ型のフロア全体をRTM成型するのに使われたそうだ。
さらに会場内で巨大なカーボン製のアンダーカバーに遭遇。隣に貼られたパネルのリヤビューにも見覚えが。これも、もしかして…。
やはりLFA、しかも今度はリヤディフューザー。これは帝人の関連会社東邦テナックスの製品で、帝人製のカーボンファイバーを使ったRTM成型品だと言う。
その仕上がりのキレイさに見入ったが、何とこれは金型から外しただけの状態なのだとか。なのにまるで磨いたかか、クリアをかけたかのような光沢感を放つのである。これによりカーボン製の、コストを抑えることにもつながったそうだ。
それにしても立体的な造形を1枚の大きなカーボンクロス二層で作っているにも関わらず、シワはおろか織目の捩れも一切起きていない。
「世界中、どこに出しても自慢出来る仕上がりだと思います」と胸を張ったのは、GFクラフトの郷家社長。実はこのLFAのディフューザーを製作したときには東邦テナックスに在籍し、まさにこのディフューザーを担当していたそうで、それだけに「開発には苦労しました」と実感がこもる。
ちなみにGFクラフトも帝人の関連会社で、80~90年代のトヨタのCカーや2000年あたりのNASDA(宇宙開発事業団)が開発していた日本版スペースシャトルHOPE-Xの機体製作を手がけてきた企業なのである。
今回はGXロケットの胴体をパーテーションとして利用しながら展示するなど、ユニークなブースを展開。現在はイプシロンロケットの胴体をJAXAや東京大学と共同研究していると言う。様々な企業の研究開発をカーボンファイバーのスペシャリストとして影で支えている。
このほか、会場内にはランボルギーニのボディパネルなどを生産しているカーボンファイバーメーカーのブースや、AMGのSL用カーボントランク、コルベット用のカーボンボンネット&ルーフなど、スーパースポーツのカーボンパーツがそこここにちりばめられていた。