「こうのとりに乗って国際宇宙ステーションへ行くんだよ」ロボット宇宙飛行士が会話

宇宙 科学
KIROBOとの会話。あいさつ・自己紹介から、ISS輸送機『こうのとり』の説明まで自然な対話を披露した。
  • KIROBOとの会話。あいさつ・自己紹介から、ISS輸送機『こうのとり』の説明まで自然な対話を披露した。
  • 左:KIROBOとロボットクリエイター高橋智隆氏、右:MIRATAとトヨタ自動車片岡史憲氏。
  • KIROBO、MIRATAとプロジェクトメンバー。左側はプロジェクトマネージャにあたる電通 西嶋氏。
  • 座った状態のMIRATA。MIRATAはKIROBOのバックアップクルーにあたり、地上での広報活動などを担う。同型機で機能はほとんど同じだが、学習機能を備えている。胸に名前が入り、KIROBOは頭部が白、MIRATAはシルバーのデザインとなっている。
  • ヒューマノイドロボットが人と機械をつなぐハブとして、コミュニケーションを支援する構想。
  • トヨタ自動車のロボット技術の蓄積がKIROBO、MIRATAの開発に活かされている。

6月26日、電通、東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車による『KIBO ROBOT PROJECT』発表会が行われた。

今年8月4日、国際宇宙ステーション補給機こうのとり HTV4号機で種子島宇宙センターから打ち上げられる予定の宇宙飛行士ロボット『KIROBO』、同型機で地上でのバックアップクルーを務める『MIRATA』が披露された。

KIROBOは、今年末から日本人初の国際宇宙ステーションコマンダーを務める、若田光一宇宙飛行士と音声によるコミュニケーション実験を行う予定だ。8月4日の打ち上げ後、HTV4号機滞在中に開梱(NASA宇宙飛行士を予定)、8月~9月中に機能確認と最初の発話、12月以降に若田宇宙飛行士との会話実験を行い、2014年5月ごろ若田宇宙飛行士の地球帰還を見守ったのち、2014年末にKIROBOも帰還する予定となっている。

KIROBOは身長約34センチ、重量約1000グラムの小型軽量ロボット。ISS日本実験棟『きぼう』から電源ケーブルをつないで動作する。行動範囲は限られているが、きぼうの船窓まで宇宙飛行士と共に移動し、地球を眺めることも可能だ。音声で人の問いかけに自然な返事をする"傾聴対話"と呼ばれる機能を備えており、コミュニケーションの相手の顔を認識して呼びかける、あいずちを打つ、相手の問いかけをおうむ返しして会話をつなぐといったことが可能だ。会話機能の披露では、開発者の呼びかけに答えてあいさつを返した後、「こうのとりに乗って国際宇宙ステーションへ行くんだよ」「こうのとりのことを教えて」「種子島から、国際宇宙ステーションに荷物を運ぶ輸送機だよ」といった一連の会話をしてみせた。ISS滞在中は、会話にだけでなく、筑波宇宙センターのきぼう管制室から送られる各種実験の手順を宇宙飛行士に伝え、作業内容の確認を行うアシスタントの役割を務める模擬実験も予定している。

KIROBO、MIRATAの機体開発を担当したロボ・ガレージ代表で東大先端研の高橋智隆特任准教授は、「コミュニケーションの相手として、画面上のキャラクターには感情移入はしにくい。リアルで実体のあるものに戻りつつある。小型軽量のロボットは安全性の点でも好ましく、また体が小さいことで相対的に賢く見える」小型情報端末としてのヒューマノイドロボットのメリットを説明。宇宙からロボットと宇宙飛行士がコミュニケーションすることで「ロボットと友達になるという日本ではなじみのある未来を、全世界に見てもらえる」という。

トヨタ自動車製品企画室の片岡史憲氏によれば、KIROBO、MIRATAの開発には、トヨタ自動車がこれまで積み上げてきた「ロボットの知能化、音声認識、コミュニケーション技術」が随所に活かされている。KIROBOの能力に加えて、地上でカスタマイズ可能なMIRATAは学習機能を持ち、『賢い頭』『優しい心』を備えた存在へ成長可能とした。

KIBO ROBOT PROJECTの開始は2010年からとのことだが、ロボットの機体開発はわずか9か月。その間に振動試験、ISS環境とKIROBO双方が発する電磁波の整合性を検証する電磁環境試験、熱環境試験など各種試験まですべてクリアしている。プロジェクト全体のとりまとめを行い、プロジェクトマネージャの立場にあたる株式会社 電通ビジネスクリエーション局 西嶋より親氏(よりは頼の旧字)によれば、短期間での開発は困難の連続だったが、「日本人宇宙飛行士」「日本から打ち上げるISS輸送機」にこだわったとのこと。プロジェクト実現にあたっては、JAXAが認可するきぼうの有償利用制度を利用している。

《秋山 文野》

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