【クライスラー イプシロン 試乗】際立って個性的な内外装デザインと2気筒エンジン…松下宏

試乗記 輸入車
クライスラー イプシロン
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クライスラー『300』と同時に『イプシロン』も新規投入された。イプシロンがクライスラー車と言われると、ン? と思う人がいるかもしれないが、ヨーロッパ大陸ではランチアブランドで販売されるイプシロンも、イギリスと日本ではクライスラーブランドで販売されるという。

クライスラーがフィアットの傘下に入り、日本法人もフィアット・クライスラー・ジャパンというひとつの会社になったので、フィアット系のランチア車がクライスラー車として販売されるのも不思議なことではない。

イプシロンの基本プラットホームやパワートレーンなどはフィアット『500』と共通だ。ボディサイズやホイールベースはひと回り大きく、両車の違いは姉妹車というようなレベルではなく、見た目は丸で違うクルマに仕上げられている。

500の兄貴分といった感じのボディサイズながら、イプシロンとして見ると正規輸入されなかった従来のモデルに比べてやや小さくなっている。全長は4mを切り、全幅も日本の5ナンバー車規格に対して余裕を残すほどのコンパクトなクルマだ。そのため、前席はともかく後席に座ると足元スペースはちょっと厳しい感じである。

イプシロンの特徴はデザインだ。今回のイプシロンは5ドアハッチバック車だが、ひと目見た感じでは3ドア車に見える。リヤドアのドアノブをCピラーの部分に隠すのは、過去にアルファロメオの『156』で使われた手法だし、シトロエンにも例があるが、イプシロンのデザインは相当に印象的である。

特にドアノブが隠されたCピラーの上部に、ルーフ、リヤドア、バックドアガラスなどの様々なラインが集合する部分は、かなり強い印象を与える。

インテリアは更に個性的なデザインとされている。センターメーターのレイアウトを採用し、凝った作りのインストセンターを持つのはイプシロンの伝統ともいえるもの。カーナビを装着しようと思うと苦労するかもしれない。やや高めのインパネシフトの位置にシフトレバーを配置するのもイプシロンらしい点だ。

搭載エンジンは2気筒900ccの8バルブインタークーラー付きターボで、マルチエアと呼ぶ独自の吸気系を採用する。ノーマルモードで63kW/145N・mのパワー&トルクを発生し、エコモードを選ぶと動力性能がやや抑えられることも含め、フィアット500用と共通。

2気筒エンジンに特有の振動や騒音はイプシロンでも抑えられていない。停車中のアイドリング音を車外で聞くと、ディーゼル車なのかと思うくらいである。なのに走行中には余り気にならなくなるというか、回転数が高くなるとバランスが良くなって振動や騒音が収まってくる。このあたりがこのエンジンの面白いところだ。

ボディが異なり、ブランドも異なることから、騒音対策が異なっていて、500に比べるとイプシロンの方がやや振動・騒音の面で優れているように思えた。ただ、スタート/ストップ機構(アイドリングストップ機構)が働いて再始動がかかるときの振動や騒音は日本車に比べるとやはり大きめである。

動力性能の面では特に不満を感じることはなく、重量の軽い500と比べて走りが鈍いかといえばそんな印象もない。タウンユースならエコモードで走らせるのがちょうど良い。なおイプシロンにもパワーステアリングのアシスト量を2段階に切り換える機構が採用されていて、これも燃費に貢献する。

ATモード付き5速シーケンシャルタイプのトランスミッションは、変速時のトルク抜けという宿命的な特徴を持つ。500を始めスマートや『up!』など、ヨーロッパのコンパクトカーに幅広く採用されているものだが、日本のユーザーからは必ずしも良い評価を受けていない。

特にアクセルを踏み込んで発進していくときなど、低いギアでの変速時に大きめの段差が感じられる。クリーピングも含めた細かな制御という点ではイプシロンの仕様は進化しているように思うが、しっかり試乗して変速特性を理解した上で買うことだ。

イプシロンの価格はゴールドが235万円でプラチナが260万円。装備の中身も異なるので単純な比較はできないが、同じエンジンを搭載するフィアット500が220万円と250万円であることを考えると、ランチアに由来するイプシロンがこの価格で買えるのはけっこう魅力的に映る。

ランチアブランドではなくクライスラーブランドだからこの価格なのかもしれないが、デザインが気に入った人にお勧めだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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