【タイで働く女性たち】情報を商品化につなげるのが私たちの仕事…村上千砂さん

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タイで働く女性たち 海外から商品開発のヒントを探るマーケットリサーチ会社会長、村上千砂さん
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タイで働く女性たち 第18回 海外から商品開発のヒントを探るマーケットリサーチ会社会長、村上千砂さん

「情報を商品化につなげるのが私たちの仕事」

「タイにはまだまだ隠れた情報がたくさんある。それを見つけ出し、商品化につなげるのが私たちの仕事」と話すのは、マーケットリサーチ会社「TNC」で会長を務める村上千砂さん。東京・神楽坂とバンコクにオフィスを構え、毎月のように往復している。月に10日はタイで暮らす。

ターゲットとなる情報は多岐に渡る。地元の人たちの間では普通に食されているのに意外と知られていない飲食物や、ヘアケアやコスメティックといった女性の美容や健康に関する情報など分野はさまざま。

例えば、「ソルティ・ライチ」。タイ国内ならどこにでも手にすることのできる果物ライチ。屋台では一山いくらで売っており、取り立てて珍しいものでもない。

タイ人はライチをかき氷にして食べる。村上さんの会社では、これをジュースにすることを考えた。企業開発者の努力の結果、生まれたのが「世界のキッチンから」の「ソルティ・ライチ」。2011年の大ヒット商品だ。

ライフスタイルリサーチャーは全世界に400人 こうした情報を海外にいて収集してくれるのが、同社から委嘱されたライフスタイルリサーチャー(市場調査員)。世界60カ国、80地域に総勢400人。しかも、全員がライフスタイル情報に強い女性ばかりというから驚きだ。

東南アジアはもとより、韓国、中国の東アジア。南北アメリカ大陸やオセアニア、さらにはヨーロッパ、中東、アフリカまでほぼ全世界を網羅。「今後、日本人が進出しそうだと思われる国に先駆けて人材を開拓している」

このうち、タイには約二十人のライフスタイルリサーチャーが暮らす。でも、女性であれば誰でも良いというわけではない。メンバーの声がけには、ひとつの基準を設けている。2年や3年の短期間で日本に帰国する駐在員やその家族は原則としてNo Good。5年以上、現地に住み、現地の人々とともに暮らしている人たちに絞って委嘱をしている。

必要以上に拒んでいるわけではない。もちろん、駐在員しか日本人のいない地域や、得難い能力を持った人であれば、その限りでもない。ただ、「私たちのアンテナになっていただく以上、現地の文化や慣習に広く深く触れ、当地に根を下ろす覚悟のある人でないとなかなか情報は得られない」と村上さん。

実際に街に出てみないと…

例えば、若年層を中心にタイ人の「朝食スタイル」が変わって来ていることは、タイ人社会の中で暮らしていないと容易には分からない。実際にタイ人ばかりが住む街に出て、身振りや手振り、言葉で接してみないと情報を得ることはできない。

かつては屋台街で、もち米(カウニアゥ)と豚串(ムーピン)を両手に持ち、代わる代わる頬張るのが、ごく当たり前の朝食だった。でも、今は好みも多様化し、それだけではない選択肢も広がっている。

何よりもアメリカを中心とした洋食文化が入ってきて、朝ごはんにコーヒーとパンを食べるようになったタイ人が増えた。それが普通と考える母親も増えた。「こうした変化を身近な目線で捉える普通の感覚が必要」と村上さんは感じている。

重要なASEANエリア タイは日系企業の進出も多く、市場としても重要なエリア。日本に向けて情報を発信するだけでなく、タイに向けた情報の提供も必要だと思っている。それだけにライフスタイルリサーチャーの役割も重い。

周辺諸国も然り。民主化の進むミャンマーや、タイと兄弟の関係にあるラオス。そして、カンボジア。今後、経済成長が予想される国々にも先駆けてネットワークを広げようと考えている。すでに2、3人の人員配置は終えた。

2012年の締めくくりは、タイ北部チェンマイで暮らすロングステイヤーへの取材。どういった食生活をしているのか。どういったことに需要があるのか。村上さんのライフワークは常に現場とともにある。

タイで生活する日本人は最新の2012年統計で約5万人。企業などの駐在員や永住者、その家族などが多くを占め、滞在する男性の多くが仕事を持って暮らしている。女性についてはビザの関係から就労が難しいと一般的に理解されているが、実は、働く女性は決して少なくない。新企画「タイで働く女性たち」では、タイで仕事に就き、活躍する女性たちを追う。

タイで働く女性たち 第18回 海外から商品開発のヒントを探るマーケットリサーチ会社会長、村上千砂さん

《編集部》

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