【東京ゲームショウ10】中国・アジアに進出するためには…ビジネスセッション

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【TGS 2010】中国そしてアジアに進出していくためには・・・アジア・ゲーム・ビジネス・セッション 【TGS 2010】中国そしてアジアに進出していくためには・・・アジア・ゲーム・ビジネス・セッション
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中国を筆頭に、熱気と混沌がうずまくアジア・ゲーム市場。東京ゲームショウの2日目に開催された専門セッション「アジア・ゲーム・ビジネス・セッション」では、この拡大著しいアジア市場に対してどのように進出していくか、4人の専門家による熱い議論が行われました。

登壇者は学術界から中国ゲーム研究の第一人者として知られる、立命館大学の中村彰憲氏。産業界から中国でモバイルゲームビジネスを進めるセガ・中国アジアモバイル部の北山俊輔氏。同じく産業界ながら、台湾でゲームクリエイターの教育事業を進めるSCEアジアの安田哲彦氏と、プレミアムエージェンシーの山路和紀氏の4名。モデレータは日経ビジネスアソシエ副編集長の降旗淳平氏です。

立命館大学映像学部の中村彰憲氏セガ・中国アジアモバイル部の北山俊輔氏SCEアジアの安田哲彦氏プレミアムエージェンシーの山路和紀氏

■共存共栄が重要

はじめに中村氏は「共存共栄で発展させる中国ゲームビジネス」と題して講演を行い、市場をさまざまな統計資料を駆使して俯瞰。「中国市場というと『攻め込む』という印象を抱きがちだが、そうした姿勢はすぐに見透かされる。共存共栄を図ることが重要だ」とメッセージを投げかけました。

20世紀初頭、近代化の遅れが原因で列強の進出を受け、苦汁をなめた中国。それだけに情報近代化については世界の最先端を進むことが当局における最重要課題で、そのための努力は惜しまない。国外の企業においても、投棄ではなく投資、国際協業や共に発展する意識が必要だ・・・中村氏はこう語ります。

一方で大手パブリッシャーの成長戦略を説明しながら、中国オンラインゲーム業界はコピー、イミテーションを経て、イノベーションの時代に突入したと説明しました。売り上げ規模においても中国最大手のテンセントはスクウェア・エニックスに肩を並べるほどに成長。ずば抜けた営業利益率を誇っています。

いまだに海賊版や違法ダウンロードが横行しているのも事実ですが、「無料化」を前提とした新しいビジネスの芽が生まれつつある中国。中村氏は台湾のマルチメディア展開事例についても紹介しました。武侠モノで有名な台湾の人気作家・温世仁氏の作品を原作とした『Star Q』がそれです。

まずテレビドラマを台湾で作成し、CCTVを皮切りに中国国内600局で放映し、大人気を博しました。ファン参加型イベントやキャラクターアイテム、玩具、コミックなどを展開して市場を育て、劇場アニメも決定。これらの実績を元に、中国運営を前提としたMMORPGの製作が交渉中とのことです。

「中華、神州、天命、仁」これらは中国人が好むコンテンツのキーワードです。国土の統一と上層部の腐敗、そこから立ち上がる民衆の歴史。これらは中国人のDNAに深く刻み込まれた文化です。そのため日本原作に固執するのではなく、共同開発を前提に、中国や台湾原作に視野を広げることも重要だと中村氏は語ります。中国市場を単なる投機対象と見ていては、こうした発想は出てこない、というわけです。その上でイノベーションの波にうまくキャッチアップし、適切に参入することが成功の秘訣だとまとめました。

中国大手の売上高と利益率台湾『Star Q』のマルチメディア展開鍵を握るのはイノベーションだ

■中国携帯ゲームビジネスの光と影

外資系企業による自社運営が難しい中国市場。成功しているオンラインゲームも、国外のものは、ほとんどライセンス販売です。そうした中で北京に営業拠点、上海に開発拠点を設け、モバイルゲームビジネスに果敢に挑んでいるのがセガ。同社・中国アジアモバイル部の北山俊輔氏は、体験者ならではの豊富な実例とあわせて、携帯ゲームビジネスにおける中国進出の心構えについて語りました。

「中国モバイルゲーム市場は、残念ながら、まだ儲からない。もう少しだけ時間が必要だ・・・」北山氏は開口一番、このように切り出しました。確かに数字だけ見ればバラ色の中国市場ですが、実際にはPCオンラインゲーム市場に比べて携帯ゲーム市場は約350億円と小さく、これからが成長期だと語ります。

ただし、実際に進出する上でさまざまなハードルがあるのも事実。北山氏は「パートナー選定」「マーケティング」「ローカライズ」「模倣品/違法コピー問題」のそれぞれで、有形無形の課題が存在すると説明しました。その上で理想形にとらわれることなく、ビジネスの勘所が押さえられるのなら、まず話を先に進めることが大事だとしました。

中でも頭が痛いのが、携帯ゲームといえども違法コピーが跋扈している状況です。ネット上でゲームをダウンロードし、アンロックした携帯電話でプレイするユーザーが後を絶たず、市場の約90%が違法コピーだと言います。ある調査によると携帯ゲームにお金を払うユーザーは23%。理由を尋ねると、お金を払う必要がないと感じているユーザーが58%を占めたとのこと。その結果ネットリテラシーが高いユーザーは違法コピーを行い、低いユーザーはネット課金自体に恐怖心があると語ります。

こうした状況に苦しめられながらも、粛々とビジネスを進めた結果、中国大手キャリアの公式サイトに「セガ専区」を設置できました。北山氏によるとキャリアは日本のモバイルビジネス成功事例に関心が高く、日本での事例を元に提案すると、食いつきが良いのだとか。また現地IPによるゲーム開発もオススメだと語りました。中国で大人気の羊のキャラクター「喜羊羊と灰太郎」のゲーム化権を取得してゲームを自社開発したところ、以前とはまったく違う温度感に驚かされたそうです。
 
中国では無許諾の「山塞器」が人気だ携帯ゲームといえども違法コピーが蔓延中国IPでの自社開発もオススメだ

■教育事業で学生の著作権意識を高める

最後に登壇したSCEアジアの安田哲彦氏とプレミアムエージェンシーの山路和紀氏は、台湾で行っている「ゲームクリエイター育成プログラム」について紹介しました。大同大学、義守大学、龍華科技大学の3校で昨年8月から実施。ゼロから始めて、実質8ヶ月間でPS3で動作するゲームを製作。今年の7月には250名の卒業生を送り出しました。

はじめに安田氏は自身の経歴をひもときながら、SCEアジアで本事業を行うことになった経緯を語りました。もともとCBSソニーに在籍していた安田氏は、SCEの立ち上げメンバーの一人としてPS事業を推進。国内市場が軌道に乗ると、香港・台湾で営業所を立ち上げ、アジア市場の開拓を進めていきます。海賊版対策に乗り出す一方で、台湾の政府関係者の信頼も獲得。クリエイターの育成事業を通して、学生の著作権意識を高める取り組みを始めました。

実際に教育プログラムを実施しているのが、ゲーム開発会社のプレミアムエージェンシーです。同社は自社開発のゲームエンジン「千鳥」をベースに、東京工科大学と協同でゲーム教育カリキュラムを開発し、アジア市場向けに発展・応用してきた経緯があります。台湾での取り組みについても、PS3開発ツールと千鳥エンジンを組みあわせ、短期間でPS3向けゲームの開発が学べるカリキュラムを開発しました。

山路氏は「中国にもゲーム開発会社はあるが、そのほとんどはCGスタジオで、モデリングなど単純作業ばかり。我々はゲームクリエイターを育成したかった」と語ります。日本からもプログラマーやデザイナーを派遣し、張り付きで学生を支援。学生の意識も高く、最終的に6作品が完成しました。今後も優れた学生を輩出していくことで、日本とアジア地域間で貿易促進や共同製作環境の整備をめざしたいとしています。

ちなみにCG-ARTS協会が行っている検定をベースに「アジアCG技能検定」を開発し、学生向けに試験的に実施したところ、28%の合格率を記録しました。国内の合格率は約30%で、しかも2年間のカリキュラムで学ぶ内容を1年弱でこなしているため、かなり成果が上がったと言えそうです。もっとも、卒業生が産業界で活躍できなければ意味がありません。山路氏から雇用面での協力を会場に呼びかける一幕もありました。
 
ゲームクリエイター育成を台湾で実施座学とグループワークによる1年間のコースPS3で動く6つのゲームが完成した

セッションの最後にはパネルディスカッションが実施されました。モデレータの降旗氏による「当局とのつきあい方は?」という質問に対して、中村氏はMMORPG『World of Warcraft』の運営移転問題について解説。問題の背景に文化部と新聞出版総署という、PCオンラインゲームを監督する2つの役所の管轄争いが見られたとし、中国企業でも行政に振り回される現状があると回答しました。一方でセガ北山氏によると、携帯ゲームビジネスにおいてはキャリアが「当局」にあたり、直接行政と折衝することはないそうです。

また山路氏は「コストカット目的で国外に外注を出していると、いずれ足下をすくわれる」と指摘。教育事業を通して共同製作のためのプラットフォームを作り、市場拡大に貢献したいと抱負を語りました。安田氏も「ゲーム産業はソフト産業で、良いソフトが湯水のように出現しないと産業が終わる」と前置きし、ソフトを作る人が評価を受け、適切な対価が得られて、若いクリエイターの憧れにならなければならないとコメント。これを阻害する海賊版の取り締まりと、著作権教育の重要性を訴えました。

【TGS 2010】中国そしてアジアに進出していくためには・・・アジア・ゲーム・ビジネス・セッション

《小野憲史@INSIDE》

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