ブラジル、リオデジャイロのジョゼ・ルイスとジルベルトは幼なじみだった。隣同士で育ち、ひとつのボールを日が暮れるまで追いかけ、いっしょにマラカナンに通った仲だった。その友情は大人になっても変わらなかった。
それぞれの髪に白いものが混じるようになった頃、ジョゼ・ルイスが病を得て明日をも知れぬ身となった。
ジルベルトがジョゼ・ルイスの枕元で言う。「ゼー、君と別れるのはつらいよ。でも、ひとつ願い事があるんだが。あの世にもサッカーはあるんだろうか? 先に行く君が僕に知らせてくれないか」。「わかった、ジル。あの世についたら調べてすぐに君に知らせるよ」。数日後、ジョゼ・ルイスは亡くなった。
それから1年ほどが過ぎた。寝ていたジルベルトはまばゆい光で目が覚めた。光の中にジョゼ・ルイスが立っていた。ジルベルトは叫ぶ。「ゼー、来てくれたんだね! やっぱり君は僕のいちばんの友達だ。それで、あの世にもサッカーはあるのかい?」。
生きていたときと同じように微笑みながらジョゼ・ルイスが答える。「いい知らせと悪い知らせがある。いい知らせは……、あの世にもサッカーはある。聖ペドロのドリブルは見ものだし、ワールドカップは開催されているし、正真正銘の“神の手”だってある」。
「ああ、よかった。そいつはすごいな。で、悪い知らせというのは?」
さっきと同じように微笑みながらジョゼ・ルイスが答える。「ジル、次の日曜日の試合、左サイドバックで君の先発が予定されている」。
★古典ジョーク。残された友人が野球の試合に登板予定だったり、ジャズコンサートで演奏予定だったりするバージョン違いがある。