【高速道路新料金】無料解放はいつ?  秘密主義で安全対策もままならず

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菅内閣の再任大臣として就任会見に望む前原国交相(8日22時) 撮影=中島みなみ
  • 菅内閣の再任大臣として就任会見に望む前原国交相(8日22時) 撮影=中島みなみ

高速道路の一部無料開放(無料化社会実験)の実施時期が、いまだに見えてこない。前原国交相はその時期を「6月下旬」としたが、残り20日を切った現在でも、関係者のほとんどは「実施時期を知らされていない」と言う。高速道路会社ですら同様だ。

一部マスコミは「28日実施」と報じたが、これについても「決まってないことは言えない」(高速道路課・広報担当企画専門官)

しかし、民間企業のセンスを持ってすれば、この時期に実施日が公表できないことなど考えられない。全路線の18%もの無料解放が実施される。これほどの大キャンペーンであるにも関わらず、なぜそのチャンスを最大限生かして利用者を増やそうとはしないのか。これこそ仕分け対象とすべき行政運営だ。

さらに、前原国交相と高速道路課は、実施日より先に利用者に伝えなければならない大事なことがある。無料開放区間における利用方法だ。

高速道路における料金支払い形態の変化は、事故を誘発する可能性がある。例えば、ETCの普及は、現金利用だけの時には起きえなかった料金所の事故を多発させた。

ETCのエラーによる停止車両への追突、横断する料金収受員をはねる人身事故、あるいは、料金所を抜けた後のETC車と現金車のスピード差による合流事故などは、ETCという新しい支払い方法が増えたことによって起きた。現金車とETC車が混在するからだ。

そのため、最初は減速するだけでよかったETC車の料金所通過は、事故増加で「徐行」することになった。

さらに高速道路を無料解放した場合、有料区間との乗り継ぎに戸惑う利用者や、思い込みで走り抜けようとする利用者が新たに加わる。料金所の事故やトラブルが増えることがあっても減る要因にはならない。

利用者の立場に立てば、こうした事故を最小限に抑えるためにも、できるだけ長い間、実施日前に無料区間の走行方法などの安全広報をする必要がある。しかし、国土交通省は安全は、高速道路会社と利用者の自己責任と言わんばかりだ。

「別に1か月前に公表しなければいけないというものではない。きっちり会社のほうからアナウンスして、間違いのないようにしてもらう」(前出・企画専門官)

ぎりぎりの調整で、しわ寄せを受けるのは利用者だ。前原氏がまるで「穴場のラーメン屋」のように実施日をひた隠しにすることに、どんな意味があるのか。

「利用者負担の高速道路で民間活力を導入したはずの高速道路が、すっかり政治案件になってしまった」(高速道路関係者)

利用者はいつまで「段階的な原則無料化」に振り回されなければならないのか。

《中島みなみ》

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