【池原照雄の単眼複眼】いすゞ、成熟市場から「新興国・小型」にシフト

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得意の2 - 3t級で攻勢

トラック最大手のいすゞ自動車が、「新興諸国」と積載量2 - 3t級の小型車に経営のリソーセスを重点配分していく方針を打ち出した。

需要の振幅が大きい先進諸国依存を軽減させ、業績の安定につなげる狙いだ。新興市場は成長力があるものの利幅は薄く、小ロット多品種生産も迫られる。成功に導くには大型車メーカーが苦手とするところを克服しなければならない。

乗用車メーカーの業績が底打ち局面を迎えたのに対し、トラック専業メーカーの回復は立ち遅れている。スクラップインセンティブなど各国の経済対策がトラックの新車需要喚起には、充分つながっていないからだ。

赤字転落となったいすゞの第2四半期累計業績は、売上高、販売台数とも前年同期比でほぼ半減。通期ではいすゞが200億円、日野自動車も245億円の最終赤字となる見通しだ。

◆需要はブレ、利益も確保しづらい日米欧

トラックメーカーが頼りとする国内の普通トラック(積載量4t超クラスの中大型車)市場は、日野によると2009年度は4万8000台レベルに縮小すると見込まれている。1990年のバブル期(約19万5000台)の4分の1であり、統計がある1960年代以降では最低水準だ。

いすゞの細井行社長は、「代替需要中心の先進諸国は需要のブレが大きいし、競争激化によって利益も上げにくい構造になっている」と指摘する。昨年来の世界的な金融危機による混乱は日米欧のトラック需要を直撃、まさに代替中心市場の弱さを露呈した。

そこで、いすゞが打ち出したのが新興諸国市場の開拓強化策だ。同社の世界でのトラック販売(ピックアップ除く)は、すでに中国を含むアジア、中東・アフリカ、中南米といった新興諸国のウェートが台数で6割程度となっている。

◆少量・多品種生産への体質転換がカギ

だが、普及率の低さからも安定した成長が見込めるのはこうした地域であり、いすゞが得意とする「小型車セグメントで市場開拓を一層強化する」(細井社長)構えだ。車両価格は「先進諸国向けより2割程度は安くしないと商売にはならないだろう」(同)と、競争力のあるコストを追求していく。

すでに開発プロジェクトを立ち上げており、1 - 2年内には第1弾の商品が投入される見通しだ。同社製品の保有台数が多い中東、ASEAN、中南米などから順次展開するという。課題は、国によってさまざまに異なるニーズや規制に対応する多品種生産となることだ。

ひと口に新興諸国といっても排ガス規制は国々で異なるし、実際の積載量など使い方も微妙に違う。個々の市場に合わせた仕様の設定が求められる一方、コスト低減のための部品共通化といった相反するテーマをこなさなければならない。

利幅が大きく、ある程度ラフな原価管理でもやって行けた普通トラックビジネスからの体質転換が、新興諸国市場開拓の成否を左右することになる。

《池原照雄》

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