昔の『シロッコ』と同じく、『ゴルフ』なみの実用性を持ちつつ、視覚的や走行感覚でもスポーティに演出したというクルマがシロッコだ。
同じエンジンを搭載するグレードで比較すると、ゴルフよりも80万円高いというのは、日本に持ち込まれたからには妥当なところかもしれないが、もう少し安くてもよかったという気もするところではある。
シロッコのドライブフィールは、「ゴルフVI」の持つ良さをベースに、ゴルフが持つバランスを崩してでもスポーティな感覚を与えたように感じられる。まとまり具合でいうとゴルフVIのほうが上だが、そのままシロッコにしてもつまらないだろうから、これでいいと思う。
どうこういってもスタイリングこそ命のクルマであり、「クーペ」と呼ぶにはちょっと無理があるような気もするところだが、たしかにスポーティかつユニークで、不思議な存在感を持っている。あまり見かけることはないかもしれないが、街で見ると非常に印象に残るはずだ。
まもなく登場する「ゴルフGTI」のほうが実用性は高いだろうから、このクルマを購入の選択肢に入れるかどうかというのは、やはりスタイリングの好みにかかっていると思う。そもそもこのクルマがあえて存在するのは、ゴルフとのデザインの差別化にあるわけで……。
1.4リットルでも充分楽しめるが、せっかくシロッコを選ぶのであれば、よりパワフルで、出来のよい足まわり「アダプティブシャシーコントロール“DCC”」の付く2リットルのほうをオススメしたい。55万円の価格差を補って余りある差があると思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県生まれ。学習院大学卒業後、自動車メディアの世界へ。自動車情報ビデオマガジン、自動車専門誌の記者を経て、フリーランスとして活動を開始。最新モデルからヒストリックカー、カスタマイズ事情からモータースポーツ、軽自動車から輸入高級車まで、幅広い守備範囲を自負する。現在は WEB媒体を中心に執筆中。「プロのクルマ好き」として、常に読者にとって役に立つ情報を提供できるよう心がけている。