フィアット『500』(チンクエチェント)をベースにしたアバルト500が日本でも発売になった。その姿は1960年代のリアエンジンのチンクエチェント・アバルトを彷彿とさせるが、もちろんフロントエンジンの前輪駆動で、搭載されるエンジンは1.4リットル4気筒ターボ。
パワーは135psと、同じエンジンを積むアバルト『グランデプント』の155psより低く設定されている。その理由はボディが小さいため車重が1110kgと、グランデプントより130kgも軽いからだ。それでも、5段MTを介しての動力性能は0-100km/h加速7.9秒、最高速205km/hとなかなか立派なものだ。
アバルト500に乗ったのは富士のショートコースだったから、一般道での乗り心地については判断できないが、サーキットでの走りは想像するよりずっとしっかりしていた。135psでも力強さを感じさせる加速が味わえるし、適度に固めた脚に16インチのピレリを履き、電子デバイスのTTCを備えたシャシーは、敏捷でありながら不安感のない小気味好い身のこなしを実現している。スポーツレザーシートのホールドも上々だった。
このアバルト500、295万円というプライスは安くないけれど、小粒だがピリリと辛いドライビング感覚の、ABARTHの名に恥じないスポーツモデルに仕上がっていると思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
吉田 匠│モータージャーナリスト
1947年4月22日生まれ。青山学院大学卒業と同時に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者としてニ玄社に入社。スポーツカーのロードテストなどを主として担当し、ヒストリックカー、ツーリングカー、FJなどのレースにも参戦、優勝経験もけっこうあり。1985年、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。自動車専門誌や一般誌に記事を執筆する。現在の愛車は 1970年アルファロメオ『ジュニアZ』、1991年ポルシェ『911カレラ2』、2005年VW『ゴルフGLi』。