熱気球ホンダグランプリ…風を感じない、音が聞こえない

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熱気球ホンダグランプリ…風を感じない、音が聞こえない
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2009熱気球ホンダグランプリ第1戦、渡良瀬バルーンレースの初日、オフィシャルバルーンによる熱気球の試乗が行われた。

この日飛んだ試乗気球は、エンベロープの容量が200リットル浴槽で実に2万5000杯分に相当する5000立方mという大型の「BNS-1」号、および3000立方mとBNS-1号よりやや小型ながら、二足歩行ロボットASIMOがあしらわれ、子供に大人気の「ASIMO」号の2機。そのASIMO号に実際に搭乗してみた。

燃料のプロパンガスを一気に燃やす特殊バーナーで火を入れると、ASIMO号はふわりと浮いた。バーナーは常時焚いているわけではなく、時々ボオッ、ボオッという感じで熱を補給する。高度を上げる時は少し燃焼頻度を多く、下げる時には燃やさずにエンベロープ内の温度が冷めるのを待つ。地上から見ているのと同じように、のんびりしたイメージである。

ASIMO号は離陸後、意外に高い上昇率でぐんぐん高度を上げるが、上昇Gはほとんど感じられない。そればかりか、風すらほとんど感じない。突風を受けたりしないかぎり、基本的には風の速度とほぼ等速で飛行するため、対気速度(周囲の空気に対する速度)はゼロに等しい。気球のゴンドラは完全なオープンエアなのだが、バーナーを止めると風も音もない、奇妙な静寂の中にいるという何ともミステリアスな感覚だ。

高度390mに到達したところでしばし水平飛行。高度や対地速度(地面に対する速度)はGPSでわかるようになっている。風が感じられないためにまるで止まっているように思えるが、実際には40km/hと、かなりの速度で移動していた。この高度まで上がると、日光、筑波山など遠方までぐるりと見渡すことができる。

その後、渡良瀬遊水地の湿地帯付近で高度を数十mにまで下げて火を止めると、静寂のなかからヒバリの鳴く声が下から賑やかに聞こえてきた。音もなく移動することは、想像以上に気持ちがいいものだ。バーナーを止めている状態の気球は、おそらく大気圏内では最も静かな乗り物であろう。

操縦していたのはベテランパイロット、AirB事務局の石川健吾さん。気球を回収するためにクルマが進入できるところを選び、着陸。接地したのは小さな用水路の土手のあるところ。傾斜面にうまくゴンドラをこすりつけ、気球の浮力でバランスを取りながら停止した。実に見事な操縦と、同乗者一同はすっかり感心していた。石川氏いわく、気球パイロットは飛ぶ楽しみは2割で、離陸した後は常に、気球をどこにどう下ろすかということを考えながら操縦しているのだという。

やがて気球を回収すべく、地上クルーのチェイサー(追跡車)が到着した。巨大な気球の熱気を抜き、収納する作業は乗員みんなもお手伝い。操縦者、地上クルーからパセンジャーまで、みんなが平等という熱気球の世界独特のノリだ。やがて巨大な気球は小さく折り畳まれ、ゴンドラやガスボンベまでがバンの荷室に詰め込まれ、作業終了。短い体験飛行だったが、熱気球のフィーリングは想像以上に楽しめるものだった。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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