【伊東大厚のトラフィック計量学】交通事故の人的被害と安全対策

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交通事故の人的被害の推移

近年、交通事故の減少傾向が続いている。死者数の減少に加え、80年代以降増加し続けていた発生件数や負傷者数も減り始めた。今回は交通事故の人的被害に注目し、安全対策との関連について考えてみたい。

交通事故の人的被害は、死亡、重傷(治療30日以上の負傷をさす)、軽傷に分類される。1970年以降の人的被害の推移(図1)をみると、死者数は80年から一旦増加したが減少、重傷者数も90年頃を境に横ばいから減少に向かっている。

90年代以降の人的被害の特徴は、死傷者総数が増加する中、死亡・重傷者数が相対的に減少している点だ。死傷者総数に占める死亡・重傷者の比率は、80年の12%から07年は6.4%とほぼ半減し、実数の上でも80年頃の水準まで下がってきた(表1)。

◆発生件数の急速な減少

またここ数年、事故の発生件数自体も急速に減少しはじめた。00年から07年の7年間で、発生件数は約10万件、死傷者総数は12万人以上減っている(表1)。

近年の発生件数の減少は、自動車交通量が減り始めたことも一因にある。しかし00年以降の自動車総走行距離など指標値の変化をみると、交通事故件数や負傷者の減少率は総走行距離のそれを大きく上回る(図2)。総走行距離やドライバーの年齢構成の変化などが事故の減少を加速した面はあるものの、交通安全対策の効果は大きいとみてよいだろう。

また総走行距離の減少要因には、積載効率の良い営業用トラックへの転換など物流効率アップや公共交通への旅客シフトなども含まれる。総走行距離の減少は、交通需要減のみならず物流対策などの波及という側面も大きい。

◆死亡・重傷事故が減ったのは?

交通安全対策は、事故を起こりにくくする「事故予防」と事故時の被害を最小限の食い止める「被害軽減」に大別できる。90年代以降、死傷者総数に占める死亡・重傷者比率が下がったのは、シートベルト着用やクルマの衝突安全性向上など「被害軽減」の効果が顕在化したと言える。

90年代初頭、運転席でも6割程度であったシートベルト着用率は、04年には運転席9割以上、助手席も8割近くまでアップした。また衝突安全ボディやエアバッグも90年代に入ってから急速に普及し、現在ではほぼ標準装備化されている。

これからの交通安全対策は「事故予防」にも力点が置かれることになる。“交通事故ゼロ”という究極の目標に向け、事故多発地点の早期解消や生活道路周辺での対策の充実、ITSを活用した予防安全システムの普及などが望まれるところである。

《伊東大厚》

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