【伊東大厚のトラフィック計量学】都市交通対策と公共交通

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大都市の公共交通シフト傾向

近年、全国の旅客輸送量は自家用車から鉄道など公共交通にシフトする兆しが出てきた。公共交通の利用促進は、都市交通対策の定番とも言える対策だが、都市圏での鉄道・バスの利用は進んでいるのだろうか。

三大都市圏(東京、中京、京阪神)の交通手段別利用率の推移を見ると、マイカーなど自動車の利用率の伸びは頭打ちになってきている(図1)。しかし99年から05年の間にピークがあったかなど、詳細はよくわからない。都市圏別の調査は数年おきであるためだ。

個別の都市を見てみよう。三大都市圏の中心都市(東京23区と政令指定市)の中には、公共交通の利用率がアップしている都市がある(図2)。東京23区は5ポイント近くもアップしており、大都市の一部で公共交通へのシフト傾向が出ているようだ。

◆公共交通が成立しにくい地方圏

都市規模別にみると、公共交通がそれなりの交通量を分担しているのは大きな都市に限られていることがわかる(図3)。利用率が10%以上となるのは三大都市圏と政令指定市クラスに限られ、他は県庁所在地でも公共交通の利用率は5%前後に過ぎない。

都市の規模が大きければ運行頻度などのサービスレベルを保つことができる上、公共交通の利便性は都心居住の選択理由にもなっていることから、大都市圏ではこれからも公共交通シフトが進むだろう。

他方、地方都市では公共交通利用率アップは難しい。都市規模が小さいと路面電車など軌道系の交通は成立しにくく、サービスレベルを保つには車両の小型化と運行頻度を確保しなければならないため、採算面に加えCO2削減効果もさほど期待できなくなる。

◆活性化の手段として

地方都市は人口減少と高齢化の影響がより深刻だ。「シャッター商店街」と言われるように、まちの中心部が衰退してしまっているところも多く、施設を郊外から中心街へ移転するなど“コンパクトシティ”への模索も続いている。

ヨーロッパに見られるような路面電車と歩行空間の賑わいが、環境にやさしい地方都市のイメージとして定着しているようだ。賑わい、つまり活動量の増加は環境的にはマイナスだが、まちが廃れてしまっては本末転倒だ。地方都市の公共交通は、まちの賑わいを取り戻すための手段としての意義がより大きい。

《伊東大厚》

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