昨年9月、埼玉県さいたま市内でトラブルとなったタクシー運転手に対し、殴る蹴るの暴行を加えて死亡させたとして、さいたま地裁は16日、被告に懲役9年の実刑を命じた。裁判長は「無抵抗の被害者に、一方的な暴行を加えており、悪質極まりない」と断定。
問題の事件は2007年9月1日の午前1時ごろ発生した。さいたま市大宮区大成町付近の国道17号で、64歳のタクシー運転手の男性が、客として乗っていた43歳の男とトラブルになった。男は背中を執拗に蹴るなどの暴行を加えており、男性は近くの病院に収容されたが、出血性ショックなどが原因で約2時間後に死亡している。
男は傷害容疑で逮捕され、後に同罪で起訴されることになるが、「こちらも運転手から暴行を受けており、先に手を出してきたのは向こうだ」などとして、正当防衛を主張していた。検察側は「運転手は足に障害があり、無抵抗だったと考えられる」と反論していた。
16日に行われた判決公判で、さいたま地裁の飯田喜信裁判長は「被告は被告の頭や背中を執拗に蹴り上げた」と認定。被告側の正当防衛主張に対しては「目撃証言からも被告が多数回に渡って蹴るなどの暴行を加えていたは明らかで、正当防衛の域を越えている。ゆえに被告証言は信用できない」と、これを棄却した。
その上で裁判長は「足に障害がある無抵抗の被害者に対し、一方的な暴行を加えており、悪質極まりない」と断定。被告の男に対して懲役9年の実刑判決を言い渡している。