【伊東大厚のトラフィック計量学】公共交通へのシフトが始まった?

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公共交通の利用促進

都市の渋滞をなくすためバスや電車を使おう、と言われつづけて久しい。先月末閣議決定された「京都議定書目標達成計画」でも400万トン近くCO2削減が見込まれている。公共交通の利用促進は、都市交通・環境対策の“不動のレギュラー”と言ってよいだろう。

バスや電車の利用が渋滞や環境対策になるのは“乗合い”であるためだ。乗客ひとりを1km運ぶ時のCO2排出量は、自家用車151gに対しバスが3分の1、電車の多い鉄道はさらに低く8分の1になり、航空機も自家用車よりは少ない(図1)。

公共交通の利用は増えているのだろうか。これを判断するには、自家用車、バス、鉄道などそれぞれの輸送量の変化を見ればよい。自家用車が減りバスや鉄道が増えていれば、公共交通の利用が進みCO2も減るはずだ。

◆輸送分担比率変化の兆し

モータリゼーションの進展ともに自家用車の輸送量は増えつづけてきた。しかし近年、僅かながら変化の兆しが見えてきた(図2)。2002年度をピークに4年連続で自家用車が減りバスや鉄道が増加しているのだ。

輸送量合計に対する分担比率でみても、自家用車が02年の60.4%から06年は58.6%と1.8ポイントダウンなのに対し、鉄道が1.4ポイント、バスと航空機はそれぞれ0.2ポイントアップである。実数、分担比率とも増加していることになる。

CO2削減効果はどのくらいだろうか。輸送分担比率以外の要因を固定しCO2排出量を試算してみた。02年度をピークに減少に転じ、05年度には温暖化対策推進大綱が策定された98年度以下の水準となり、06年段階では98年比150万トンのCO2が削減されたと計算できる(図3)。

◆公共交通シフトの要因は? 

この結果を都市交通対策の成果とするのはやや早計だ。全国データであるため出張や観光旅行時の交通手段変化も含まれるためだ。とはいえ、都市部での鉄道新線開通や複々線化、共通IC乗車券や格安チケット導入等、公共交通の追い風要因は多いため、日本全体の公共交通利用シフト傾向は、頷ける結果なのかもしれない。

また近年、旅客需要全体(輸送量の合計、図2)も頭打ちになっている。人口減少や高齢化の影響を受け、旅客需要は今後も減少する可能性があるのは事実だが、もし“出かけない人”が増えていくのだとすると、CO2減に寄与するとしても、あまり幸福な社会とは言えないと思う。

《伊東大厚》

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