【伊東大厚のトラフィック計量学】搬送時間の短縮と道路インフラ対策…救急と事故 その4

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救急は一刻を争う。応急手当てが大事なことは言うまでもないが、本格的な治療を行うには病院への搬送時間の短縮も重要だ。今回は、搬送時間の短縮に向けた課題と道路インフラの役割について考えてみたい。

◆都市、地方それぞれの課題

通報から病院収容までの所要時間と救急隊あたりの出場件数を都道府県別の分布をみると、地域ごとの課題が見えてくる(図1)。救急隊あたりの年間出場件数が多いのは、いずれも大都市を抱える地域だ。特に東京都は全国平均の約3倍近い。

東京都が病院収容まで平均43分もかかってしまうのは、救急隊が常時繁忙状態にあることが主因だろう。119番通報の多い都市部では、救急隊数を増やすとともに、真に救急を必要としている人に救急隊を優先することが課題だ。症状に応じ救急搬送の必要性を判断する救急トリアージが有効な対策となる。

他方、岩手県や島根県などの場合、さほど出場件数が多くないにもかかわらず搬送に時間がかかっている(図1左上)。地方部は過疎地や中山間地を抱えており、面積は広いが医療施設が少ないといった特性がある。これらを補うには事故現場と医療施設を結ぶ交通網のスピードアップが課題となる。高速道路の整備や出入り口を増やす道路インフラ対策が有効だ。

◆道路インフラ対策の効果事例

山形市では02年、周辺の高速道路の開通とともに救急病院近くを通る高速道路に緊急車両専用出口を設置した。これらによって救急病院まで30分以内、60分以内で到達できるエリアは飛躍的に拡大している(図2、写真)。

地方部では、サービスエリアへのスマートIC設置をはじめ出入り口の増設に加え、高速道路の近くに救急病院を建設するなど、救急医療も念頭においたまちづくりを進めることが有効だと思う。

◆緊急車両の優先信号システム“FAST”

都市部では、どのようなインフラ対策が有効なのだろうか。市街地の道路は交差点や渋滞が多く、緊急車両の優先通行が阻害されるケースが多い。

緊急車両が交差点を通過する際、路車間通信を活用し青時間の延長など優先信号とする“FAST”(Fast Emergency Vehicle Preemption Systems)というシステムがある。実走行試験では最大20%程度の時間短縮効果があるようだ。信号の高度化は、街路の渋滞を減らすとともに救急搬送の時間短縮にも効果をもたらす。

交通事故などの際、救命率を上げるための交通対策について4回にわたり解説してきた。これまで紹介したように、地域ごとの課題に応じ「緊急通報」、「救急隊の出動」、「患者の搬送」それぞれの段階で的確な対策を講じていくことが大切だと思う。

《伊東大厚》

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