【ITS世界会議07】ITSを取り巻く各国の事情

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持続可能な成長にとってITSは不可欠な要素

10月10日、中国の北京市で開催中の第14回ITS世界会議において、各国政府の大臣・高官級によるセッションが実施された。このイベントでは、それぞれの登壇者が自らの国の立場で交通問題について述べて、ITSの重要性や必要性について話した。

最初に講演をした中華人民共和国交通部副部長のMengyong Weng氏は、「IT技術を駆使した交通インフラを構築することが、中国の発展にとって重要な要素になっている」と強調。ITSが今後の中国政府にとって重要な取り組みのひとつであることをアピールした。

「特に現在の大きな課題は、原油資源の需要増大により原油資源が不足してきていることと、排出ガスによる環境問題です。ITSで効率的な交通インフラを構築し、資源を節約し、環境への悪影響を低減していくことが、中国の持続可能な開発にとって重要です」(Mengyong Weng氏)

また“中国の次”の新興成長市場として注目されているインドからは、インド都市開発省国務大臣のAjay Maken氏が登壇。中国と同じく厳しい状況におかれているインドの交通事情を鑑みて、インドにおけるITSが、特に安全分野で必要であると話した。

「1997年に私は中国を訪問し、今回ひさしぶりに中国に来たのですが、そこで気づいたのが『自転車が少なくなった』ということです。クルマの台数が急激に増えており、交通事故抑止の重要性は高くなってきています」

「自動車の増加は環境や経済に悪影響を及ぼしています。2005年のデータでは、40万件の交通事故がインドで発生し、交通事故死亡者は9万4000人です。2025年にはインドの人口の半分が都市部に住み、今より豊かになります。これは交通インフラの大きな負担になります。ITSは今すぐに取り入れていかなければならないのです」(Ajay Maken氏)

さらにMaken氏は現在の首都デリーの交通状況を例としてあげ、「悪夢のような状況」であると、途上国の交通問題の深刻さを訴えた。

「道路の安全という観点では、デリーは悪夢の一言に尽きます。デリーの新聞を読みますと、毎日のようにクルマやバスの事故で何十人もの人が亡くなっています。ITSの安全システムによる介入は急務です。またインドでは鉄道網が発達しています。その総延長距離は世界でも有数のものであり、ここにもITSを活用する余地があります」(Ajay Maken氏)

一方、先進国からは日本、アメリカ、ノルウェー、スウェーデンが登壇し、それぞれの立場からITSのニーズや将来像について語った。

「交通システムは社会にとって不可欠な要素になっています。一方で、クルマ社会の問題として『事故』『渋滞』『環境負荷の増大』があり、これは各国共通のものです。ITSはこれらの問題の解決策として情報通信技術を活用するものであり、現代社会にとって重要なものになっています」(菊川繁・国土交通省官房審議官)

「日本ではVICSやETCの普及を筆頭にITSの実用化と普及に力を注いでおり、政府もIT新改革戦略などの政策プログラムで推進しています」(同)

「ノルウェーでは全国ITS戦略というプログラムを推進しており、これはすべての交通モードを含むものです。この戦略を打ち立てるにあたり、当初から(複数の交通手段を連携させる)『マルチモーダル』が重要であると考えていました。道路・鉄道・海運・航空の輸送モードをネットワークとして繋ぐため、相互に連携・協力していくことが重要です。これがひとつの土台になり、様々なITSサービスが新ビジネスとして生まれてくることに期待しています」(Liv Signe Navarsete・ノルウェー運輸通信相大臣)

先進国と新興国で置かれている問題の量や質は異なるが、クルマ社会の問題を軽減・解決することにITSが重要であること、さらにITSの実用化にあたってはクルマ以外の公共交通との連携が必要であることなど、多くの点で意見が一致していた。

現代の社会や経済の構造は、世界各地で“都市化”を促す傾向にあり、それが渋滞・事故・環境といったクルマの問題をさらに深刻なものにしている。ITSは“クルマだけ”のものではなく、クルマも含む輸送機関全体のシステムとして捉えて、実用化と普及を急ぐ段階にあると言えそうだ。

《神尾寿》

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