先月末パリ・シャンゼリゼ通りにオープンしたシトロエン新ショールーム『C42』の地下には、往年のモデル『DS』が1台置かれている。ただし普通のDSではない。ボディ自ら分割しながら伸長する、動くオブジェだ。
最終的に高さ18mまで伸び、吹き抜けを越えて2階レベルまで達してから再びDSの形に戻る。『トーテム・モービル』と名づけられたこのオブジェを製作したのは、米国人ロボット・アーティストで、ニューヨーク形状変化ロボット製作集団代表でもあるチコ・マクマートリー。
彼は「それまで個人的には、車といえば常にバンタイプにしか目が行かなかった。 しかしDSと出会ったとき、それがまったく違ったものであり、ひとつの彫刻であると認識した」と語る。そのうえで、専門分野のロボットアートで、有機的な力強さを表現したという。アトリエには廃教会を用い、総勢25名のスタッフが携わった。
トーテム・モービルは当初からC42の目玉オブジェとして企画されたものだが、それに先立ち2006年パリサロンでも展示された。
解体から元の形に戻るまでのワンサイクルは約10分。その間、限りなく無音で進行する。その秘密は油圧制御だ。マクマートリーによれば「偉大なハイドロニューマティック・サスペンションへの敬意」という。