どうして助けなかったのか…パトカー追跡中の事故で証言

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1994年3月、岩手県盛岡市内の交差点で信号待ちをしていた際、パトカーが追跡してきた容疑車両に激突され、それが原因となって乗用車が全焼し、乗っていた2人が死亡したという事故で、2人の遺族が岩手県(県警)に対して総額1億4000万円あまりの損害賠償を求めた民事訴訟の証人尋問が14日、盛岡地裁で開かれた。

事故を近くで目撃していた証人は「警察が事故直後に救助すれば助かった」と証言している。

問題の事故は岩手県盛岡市上堂1丁目付近にある国道4号線と県道の交差点で発生している。1994年3月31日の午前0時20分ごろ、岩手県警・盛岡西署のパトカーから追跡を受けていた18歳の少年が運転する乗用車が右折レーンで信号待ちをしていた22歳男性運転のクルマに激突した。

パトカーは被害車両の乗員を救護せず、反対車線で立ち往生していた容疑車両の運転者を逮捕することを優先した。クルマは直後に炎上。乗っていた2人は自力で脱出することが出来ないまま焼死した。後の調べで遺体の気管には煤が付着していたことが判明しているが、これは火災発生後も呼吸していたことを意味するものだった。

警察官が容疑者の身柄確保を優先するのではなく、被害者救助を優先していれば生還できた可能性が高かったと遺族側は指摘。これに対して警察側は「容疑者には逃走の恐れがあり、何よりも優先しなくてはいけなかった」と主張。被害車両については「無人だと思った」としていた。

今回、証言を行ったのは現場近くで事故を目撃した28歳(当時18歳)の男性。この男性は知人の運転するクルマの助手席に乗車中に事故を目撃。昨年夏に行われた現場検証実施をニュース番組によって知り、地元のテレビ局に対して「事故の様子を見ていた。自分に協力できることはないだろうか」と投書したことが証言台に立つきっかけとなったという。

男性は「容疑車両に追突され、弾き飛ばされた被害車両の真下の路面に火が見えた」と陳述。しかし、この段階で容疑車両を追跡していたパトカーに乗車していた警察官は火が出ていることに気づかないばかりか、「被害車両に人が乗っているかどうかの確認をする様子も無かった」と言葉を続けた。

この後、被害車両は漏れたガソリンに引火。全体が火に包まれたが、男性は「事故直後から炎上するまでの間、2人を救助する時間は十分にあった。警察官は車内に人が乗っているかどうかの確認もしていない。あのような状況では被害者の救助に向かうのが当然」と述べている。

これに対して弁護側(警察側)は、今回の証言が事故発生から10年経過した段階で行われたことから、証言自体の信憑性を巡る反対尋問に終始した。

だが、これに対しても男性は「記憶に曖昧なところがあるかもしれないが、自分でも“警察官はなぜ救助に向かわなかったのか”という部分がずっと疑問になっていた。救助に向かっていれば助かった可能性は高いはずなのにと思っていたが、その思いがより強まった」と話し、証言に信憑性が無いとしたい弁護側の思惑を一蹴している。

尋問は当初今回のみで終わる予定だったが、予定された時間をオーバーしてしまったため、6月下旬に再度開かれることになった。

《石田真一》

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