
~ ものづくり産業における効率化による開発期間短縮とコスト低減に貢献 ~
2025年10月2日
国立大学法人京都大学
国立大学法人埼玉大学
国立大学法人富山大学
BIPROGY株式会社
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 産学共同ステージⅡに採択 ~ ものづくり産業における効率化による開発期間短縮とコスト低減に貢献 ~
【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M105480/202510026425/_prw_PT1fl_99XvxTqW.png】
【背景】
液体や気体などの流体エネルギーを機械エネルギーに変換し、制御・移動・処理するための流体装置は、製造・医療・環境などの多様な分野で不可欠な役割を果たしています。
流体装置の開発には、コンピューター上での流体シミュレーションが一般的に用いられ、流体シミュレーション解析ソフトウエア(以下、CFD)が普及しています。しかし、CFDでは流れの方向や強さなどの詳細データは得られるものの、この複雑なデータから有効な情報を取り出すのは容易ではありません。その結果、試行錯誤的な設計変更と長時間かかるシミュレーションの繰り返しを余儀なくされ、産業流体装置の開発現場で開発期間の長期化とそれに伴うコスト増大が課題となっています。
【「産業流体装置開発を加速する流線トポロジカルデータ解析ソリューション」の概要】
本共同研究は、空調機メーカーであるダイキン工業の空調用圧縮機開発における性能向上のための課題解決を目指し、広く流体を扱う産業装置の開発で用いられるような流体解析ソフトウエアを研究開発します。
空調用圧縮機は、冷媒(ガス)の温度をコントロールするエアコンの心臓部であり、ダイキン工業は圧縮機の製造において高い技術力と品質を追求しています。圧縮機内には冷媒を循環させるためのモーターや圧縮機の動作部分を潤滑し摩耗を防ぐための油が存在します。この油が冷媒ガスとともに圧縮機外に吐出される「油上り」という現象があり、重要な設計課題となっていました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202510026425-O1-Ys083aSd】
流線トポロジカルデータ解析を用いることで、空調用圧縮機内部の複雑な冷媒や油の流れのパターンや全体構造を効率的に抽出して可視化できるようになり、圧縮機内部の構造をどのように変えれば効果があるかを的確に特定することが可能になります。どこに問題があるのかがわからないまま試行錯誤するのではなく、狙いを定めて効率的な開発を行うことで、開発期間の短縮やコストの低減を目指します。
京都大学、埼玉大学、富山大学とBIPROGYは、ダイキン工業の課題に対応するためのソフトウエア研究開発を通じて、産業流体装置に対して流線トポロジカルデータ解析を実行する共通基盤モジュールを整備し、個別カスタマイズによって広範な産業開発に適用可能とする「TFDA-iソリューション」(注2)の構築を目指します。
【採択の概要】
・研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)2025年度 産学共同 ステージⅡ(本格フェーズ)
・研究テーマ:産業流体装置開発を加速する流線トポロジカルデータ解析ソリューション
・開発期間:2025年10月1日~2030年3月31日
・役割:
京都大学、埼玉大学、富山大学:流線トポロジカルデータ解析(TFDA)の理論整備
ダイキン工業:空調用圧縮機のシミュレーションデータ提供と適用検証
BIPROGY:TFDA実装アルゴリズムおよびソフトウエアの研究開発
【今後の取り組み】
本共同研究では、ダイキン工業における空調用圧縮機の油上り現象の発生比率低減を目指します。
流線トポロジカルデータ解析は、CFDを補完するものとして今後広く使われる可能性があります。将来的には、自動車や航空機などの流体を扱う広範な産業機器の開発現場で活用できる流線トポロジカルデータ解析ソリューションの提供を目指しています。
以 上
注1:流線トポロジカルデータ解析(Topological Flow Data Analysis; TFDA)
気流や水流などの流線構造から渦などの特徴を抽出し、文字列として出力する技術
注2:TFDA-iソリューション
産業機器開発用のTFD解析ソフトウエアとそのカスタマイズをセットにしたサービス
■関連リンク:
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) https://www.jst.go.jp/a-step/index.html
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