長万部-小樽間の代替交通について中間報告…悩めるバスドライバー不足、バス以外の選択肢も視野に 北海道新幹線の並行在来線問題

余市駅前十字街停留場を発着している北海道中央バスの札幌直通便。今後、沿線を路線に持つバス事業者を交えた協議が進められる。
  • 余市駅前十字街停留場を発着している北海道中央バスの札幌直通便。今後、沿線を路線に持つバス事業者を交えた協議が進められる。
  • 函館本線黒松内駅。代替交通の結節点となる交通拠点施設としての活用を想定。
  • 小樽駅のひとつ隣の塩谷駅。同駅は銀山駅と同様に国道から離れて位置していことから、区間別協議会では代替バスの国道からの乗入れ方法などが検討される。
  • 代替バス路線の概要。ほぼ国道5号に沿うが、停留場から外れる駅もある。
  • 区間別協議会の構成。
  • 代替バスの欠損に対する考え方。基本的には沿線自治体が補填する。

北海道は6月9日、16回目となる北海道新幹線並行在来線対策協議会・後志ブロック会議の内容を公表した。

同会議は2012年から北海道新幹線長万部~札幌間の並行在来線である函館本線・長万部~小樽間の方向性について協議しているが、2022年3月に長万部~小樽間の全線廃止が合意されてからは、焦点が代替バス路線の方向性へ移っている。

代替バス路線の概要。ほぼ国道5号に沿うが、停留場から外れる駅もある。代替バス路線の概要。ほぼ国道5号に沿うが、停留場から外れる駅もある。

5月28日に開かれた今回の会議では、その検討状況についての中間報告が行なわれおり、輸送密度が高い区間(余市~小樽)では実際にバスによる輸送が可能かどうかの検討を行なったほか、地域の実情に応じて区間別の検討会を設け、バス事業者をオブザーバーに招いての持続可能な地域交通の確保を向けた検討も行なったという。

区間別協議会の構成。区間別協議会の構成。
小樽駅のひとつ隣の塩谷駅。同駅は銀山駅と同様に国道から離れて位置していことから、区間別協議会では代替バスの国道からの乗入れ方法などが検討される。小樽駅のひとつ隣の塩谷駅。同駅は銀山駅と同様に国道から離れて位置していことから、区間別協議会では代替バスの国道からの乗入れ方法などが検討される。

これらの検討では、将来のバスドライバー不足を考慮に入れながら、利用が少ない時間帯においてはバス以外の交通手段も検討することが必要であるとしており、今後はバス事業者を含めた検討を進めていく考えが示されている。

また、今回は停留所や車両、運行経費、路線の起終点や複数のバス路線の結節点となる交通拠点施設についての方向性も示されている。

停留所については、バスロケーションシステムの導入も視野に入れるとしているが、増設については速達性が損なわれる恐れがあることから慎重姿勢で、利用実態に留意しながら既存バス停の移設や存廃を含めバス事業者と協議することや、冬季の降雪時や雨天時などで利便性を高めるため、既存の鉄道施設を有効活用しながら、まちづくりの観点も含めて整備していくことが重要だとしている。

車両については、高齢者の利用を考慮して、低床バスや電気バス、プラグインハイブリットバス、水素利用の燃料電池バスなどの導入を視野に入れ、実証実験を通して検討を進めるとしている。関連して小樽市では2023年度に代替バスの実証運行を行なうとしており、その予算として60万円が充てられている。

運行経費については、欠損が出た場合は自治体が補填することとし、既存バス路線を活用した場合は鉄道の代替路線として位置づけられた区間に対する欠損を補填するとしている。

代替バスの欠損に対する考え方。基本的には沿線自治体が補填する。代替バスの欠損に対する考え方。基本的には沿線自治体が補填する。

ただし、経費の試算については、運賃設定などを必要に応じて法定協議会(北海道後志地域公共交通活性化協議会)において協議するケースも想定されるため、状況を見極める必要があるとしている。

交通拠点施設については、余市・倶知安・黒松内・長万部の各駅などに運転手の休憩所や車両の待機所などの機能も持つ施設を整備するとしており、バス事業者を交えて協議するという。

函館本線黒松内駅。代替交通の結節点となる交通拠点施設としての活用を想定。函館本線黒松内駅。代替交通の結節点となる交通拠点施設としての活用を想定。

北海道では、後志(しりべし)地域を受け持つバス事業者(北海道中央バス、道南バス、ニセコバス)に運行への協力を求めていくとしているが、1975年をピークにバスドライバーは減少の一途で、運転に必要な大型2種免許取得者の減少や高齢化も進んでいることから、態勢の構築は難航が予想される。

なお、今後は10~11月に予定されている次の会議でバス事業者を交えた協議状況が報告され、12月頃の住民説明会や議会への報告を経て、年明け1月以降の会議で方針確認を行なうとしているが、とくに利用者が多い余市~小樽間では速達性や輸送力が鉄道並に担保されるのかどうかが注目される。

《佐藤正樹》

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