アメリカ市場のEV関連規制とZEV法およびインセンティブの最新動向…S&Pグローバルモビリティ 波多野通氏[インタビュー]

アメリカ市場のEV関連規制とZEV法およびインセンティブの最新動向…S&Pグローバルモビリティ 波多野通氏[インタビュー]
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2025年に向けたグリーンハウスガス(GHG)規制について、バイデン政権の決定とインセンティブの状況を、S&Pグローバルモビリティ 日本パワートレイン・フォーキャスト アソシエイト・ダイレクターの波多野通(はたの・とおる)氏に聞いた。

---:バイデン政権のGHG規制はどのような内容なのでしょうか。

波多野:昨年2021年8月に、グリーンハウスガス規制として2026モデルイヤー(※2025年半ばから販売されるモデル)までのドラフト(草案)が発表されました。同時にバイデン大統領は、2027モデルイヤー以降の規制検討も各官庁に指示しています。

規制についてもうひとつ考慮すべきこととして、カリフォルニア州だけに認められているZEV法という独自規制があります。

---:カリフォルニア州だけ独自ルールがあるということですか?

波多野:そうです。しかしその他の州も、カリフォルニア州の規制を採用するかどうかの判断ができる、という権限があります。カリフォルニア州のように、独自に規制を作ることはできないが、カリフォルニア州の規制を導入することはできる、ということです。

---:ではカリフォルニア州の規制を採用しなかった場合は、アメリカの統一的な規制値が適用されるということですか。

波多野:連邦政府の規制として、EPA(米国環境保護庁: Environmental Protection Agency)が管轄するグリーンハウスガス規制と、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)が管理するCAFE規制があります。

---:そうすると、カリフォルニア規制を採用している州と、連邦政府の規制を採用している州の2種類があるのですね。

波多野:そうですね。カリフォルニア州独自の規制の一つがZEV法であり、その州での販売台数に応じて一定の比率のZEV(Zero Emission Vehicle)を売らなければいけないというものです。このようなルールは連邦政府の規制にはありません。

---:カリフォルニアの規制値としてよく言われている、2035年までに内燃機関ゼロというのは、ZEV法の規制値ですか?

波多野:カリフォルニア州知事が、2035年までにZEVのみの販売にしなさい、というエグゼクティブオーダーを出していますが、それを達成するための2026モデルイヤー以降の規制値が検討されているところです。

---:なるほど。2035年にZEVのみという目標があり、それに対する年ごとの段階目標をZEV法で規定しているのですね。

波多野:そうです。州知事が旗を立てて、その旗に向かうルートを検討中ということです。それと同様に、連邦政府も規制を強化しています。連邦政府が2026モデルイヤーまでのGHG排出規制のドラフトを2021年8月に発表し、その後2021年の年末までにパブリックコメントを集めて最終決定しましたが、このわずか4カ月間でその内容がかなり厳しくなりました。

---:8月のドラフトより厳しくなったのですか?

波多野:はい。ドラフトには「CO2削減目標をさらに10g程度厳しくするかもしれない」という記載があったのですが、そちらが採用されました。わずか4カ月間に生じたこの規制値の変更により、自動車メーカーは2026モデルイヤーまでの生産計画や販売計画等の戦略見直しを迫られています。

《波多野 通》

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