【EVトランスフォーメーション】次なるMaaSの事業ヒントはこれだ

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昨今自動車のEV化と脱炭素化に向けた動きの進展を背景として、モビリティ業界とエネルギー業界で相互に新規参入を行う動きが北米を中心に活発化している。

また、日本でもその動きが始まっており、まさにモビリティとエネルギーの領域におけるビジネスが急激な変化を遂げている最中。一方で日本市場についてはまだ明確な定義がなされていないため、昨年当社から「EVトランスフォーメーション」の呼称にて定義しカオスマップを発表した。

この発表にいたった背景や、事業化に向けた方向性を解説していく。

まずは、多くの人々の疑問である「なぜ環境領域に取り組む必要があるのか?」から紐解いていこう。菅義偉元内閣総理大臣による「2050年カーボンニュートラル宣言」以降、「カーボンニュートラル」という言葉が脚光を浴びている。カーボンニュートラルは端的にいうと1)温室効果ガスを減らす2)排出せざるを得なかったぶんについては同じ量を「吸収」または「除去」することにより、差し引きゼロ、正味ゼロ(ネットゼロ)を目指しましょう、ということ。これが、「カーボンニュートラル」の意味すること。

企業や自治体としてカーボンニュートラルに取り組む必要性は下記の2点だと考えている。ひとつは1)「持続可能な社会を実現するための企業責任」。もう一つは2)「大きなビジネスチャンスがあるから」。1)の持続可能な社会の実現については、ESG投資や環境規制などイメージが湧きやすいと思うが、2)大きなビジネスチャンスというのは、イメージ湧かない人も多いのではないだろうか?

カーボンニュートラルは世界が持続可能性を維持するために必要とされており、世界的に見てコミットしなくてはいけない市場となっている。いわば約束された市場といえるだろう。

そのため各国が成長戦略としてカーボンニュートラルを捉えており、ボストンコンサルティンググループでは、2020年~2050年までの間で、世界で累計122兆ドル(約1.3京円)の関連投資が必要※1と試算している。

また、日本でも新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2兆円の「グリーンイノベーション基金」を創設し、企業を今後10年間、継続して支援することを表明。この2兆円の基金を呼び水として、約15兆円※2とも想定される、民間企業の野心的なイノベーション投資を引き出すことが狙い。

そのためカーボンニュートラルは、CO2の排出削減によって経済活動にブレーキがかかると捉われているが、実際は大きなビジネスチャンスが広がっている。

カーボンニュートラルにおける事業機会

上記の通りカーボンニュートラルにおける事業機会の大きさはイメージが湧いただろう。

では、日本における二酸化炭素の排出量に割合を見ていこう。CO2の排出量を見た時に一番多いのは産業部門で製造などの過程で排出するCO2。2番目が運輸部門で一般的にイメージするガソリン車を運転時に排出するCO2のイメージ。産業部門の※3約14%が鉄鋼業で排出するCO2のため、運輸部門がすごく多いことはイメージが湧くのではないだろうか?

それが、EV車に置き換わっていくと、走行中のCO2の排出量は少なくなる。もちろん火力発電がベースロード電源である日本では、走らせるための電気や製造時の使う電力が火力発電で賄われているためCO2を排出するのは事実であるが、将来カーボンニュートラルを目指すうえでは、EVへの移行は抗えない流れだろう。

EVトランスフォーメーションとは

EV化の流れが増えていく中で、なぜエネルギーとモビリティの領域が融合していくのだろうか?

それは単純にEVのエネルギー源が電気であることに他ならない。ガソリン車については電力源がガソリンだったが、電力になることで最適化が必要となる。そのため本領域はEV化が進むことにより生まれる事業機会ととらえ、「EVトランスフォーメーション」と定義した。

エネルギー×モビリティの事業領域について

そのためこの二つの領域の事業化を考えた時に、サービス提供とマネジメント領域の2つの領域があると考えている。エネルギー源や移動手段を提供する事業からより高度化をしていく中で、マネジメント領域へと深化しながら、モビリティとエネルギーが融合していくイメージで捉えており、以下の図の整理となる。

では、どうやって自分たちの事業にしていくのが良いだろうか?本領域はかなり巨大な市場のため、一社単独でエコシステムが完結するのは難しく、まず自社が事業化する事業ドメインを特定することが重要。その中で自社が不足しているアセットについてアライアンス先を見つけることが必要であるだろう。その考えるきっかけとして今回のカオスマップを活用いただきたい。

例えば自身がモビリティを提供している企業であれば、エネルギーのサービス提供領域へ広げていく方向性やモビリティ自体のマネジメント領域への事業へ幅だししていくなどが選択肢として挙げられるだろう。

今後の事業機会について

最後に今後の事業機会について私の考えをお伝えしたい。

今回EVトランスフォーメーションと定義づけした9つの領域については、どれも今後事業機会が広がっていくだろう。自分たちの事業機会を考えるときのポイントは、1.事業の親和性2.事業規模から選べるのではないだろうか。

例えば充電インフラやVtoH領域は、その商品自体の製造が必要であり、皆さんが事業化進めるには、大きな参入障壁があると考える。一方でEV導入サービスやEVフリートに関しては、EVのアセットを持っている企業からは参入しやすく、エネルギーマネジメント領域にアセットを持っている企業からしても、連携しやすいのではないだろうか。

また事業規模について、今後伸びてきている業界のため考えにくいかもしれないが、直近の企業の動きは見えてくる。直近で進出が多い領域は「EV+電力小売り」「EV+MaaS」「EV導入サービス」「EVフリートの4領域」。

上記4領域以外は比較的以前より参入企業が多くPoCを実施していたが、昨年より急激にこの4領域が加速していると感じている。本記事の読者の多くはモビリティやエネルギーに関連していると思うが、ぜひ自社の事業との親和性と「EV+電力小売り」「EV+MaaS」「EV導入サービス」「EVフリート」の4領域を重ね合わせて、自社の事業ドメインの決定の参考にしていただければと思う。

※1出典:ボストンコンサルティンググループ著 「BCGカーボンニュートラル実践経営」(日経BP)より
※2出典:経済産業省「グリーンイノベーション基金事業の今後の進め方について」より
※3出典:国立研究開発法人国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ」(2019年度確報値)

~プロフィール~
株式会社リブ・コンサルティング モビリティインダストリー マネージャー
横山 賢治
同志社大学経済学部卒業後、大手電機メーカーを経て現職。
モビリティ業界をメインコンサルティングとして従事。
《主なコンサルティング実績》
大手自動車部品メーカー事業開発支援
MaaS(ライドシェア)の実証実験構築支援
ベンチャーにおける事業戦略立案・グロース支援
カーディーラー様向けCRM構築支援
カーディーラー様向けマーケティング戦略構築支援 など

《横山 賢治》

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