前回は、コネクティッドプラットフォームとしてのクルマの将来性と、国産完成車メーカーがとるべき戦略について論じた。今回は、一般道をレベル5対応の完全自動運転車が走るようになると、社会や人々の暮らしはどのように変わっていくか話したい。
拡大する自動運転車の価値
これまで完成車メーカーは、走行性能や快適性、安全性を高めることによって、市場の期待に応えてきた。
記憶に新しいところでは2021年3月、国産メーカーのホンダが世界で初めて、レベル3相当の自動運転システムを搭載した新型「レジェンド」を発売したことが話題になったが、多様な車両が混在する環境での実用化にはさまざまなチャレンジがあるが、自動運転車は確実にレベル5の実用化に向かって進みつつある。
主要メーカーはパーソナルモビリティにおいても、2020年代の後半へのレベル4/5車両の実用化を目指しており、これから10年以内に、ドライバーいらずのレベル5対応の自動運転車が街中を走りはじめるはずだ。これが実現すれば、自動車の歴史のなかでもっともエポックメイキングな出来事として、人々に記憶されることになるだろう。

だが、高度に知能化された完全自動運転車の実用化がもたらす恩恵は、人を運転の義務から解放するだけに留まらない。その先にはわれわれが抱える社会課題の解決、そして新たなビジネスチャンスが広がっているからだ。
自動運転技術の急速な進歩は、人々のライフスタイルを変えようとしている。すでに実証実験が始まっている取り組みを中心に紹介する。