保線作業用機械を順次使用再開へ…要点検箇所の整備が完了 JR北海道の逸走トラブル

保線作業用機械(ミニホキ)を牽引する軌道モーターカー。
  • 保線作業用機械(ミニホキ)を牽引する軌道モーターカー。
  • 砕石散布用の「ミニホキ」。
  • トラブルの経過。逸走が始まり駐車ブレーキと手動ブレーキを作動させたが機能しなかった。峠下道路踏切では警備員が配置されていたが、約50km/hで通過した仁山道路踏切、約80km/hで通過した天野道路踏切では警備員無配置で、踏切の警報システムも保線用機械では自車位置を認識させる軌道回路が働かない仕組みのため、作動しなかった。
  • 軌道モーターカーとミニホキの点検結果。
  • ミニホキのブレーキシステム概要。ブレーキ用の圧縮空気を送り込む軌道モーターカーはもちろん自車の制動が可能だが、ミニホキも制動できないと完全に止めることはできない。
  • ミニホキのブレーキ構造概要。基本的には踏面ブレーキを採用する一般の鉄道車両と同じ仕組みだが、電車の付随車のように車軸に作用するディスクブレーキのようなものはないため、最も単純なブレーキシステムといえる。シリンダー内のピストン移動量(ストローク量)に余裕を持たせずにピストンが伸び切ると、制輪子を車輪に圧着することができない。
  • ストローク量を判定する目盛り。これを確認するルールがなかったこともトラブルの要因につながった。

JR北海道は7月9日、逸走トラブルを起こした保線作業用機械について、その点検結果を明らかにした。

このトラブルは6月7日、函館本線七飯(ななえ)~大沼間のうち、仁山(にやま)駅手前(大沼方の峠下道路踏切手前)から、七飯駅手前(中須田道路踏切手前)までの約7km区間を、社員が乗車したまま速度50~80km/hほどで逸走したもの。

原因としては、軌道モーターカーと「ミニホキ」と呼ばれる砕石散布用車両のブレーキに使われている「踏面ブレーキ」(圧縮空気で制輪子を作用させ、車輪の動きを止めるブレーキ)の制輪子を動かすシリンダーのピストンが伸びきり、その移動量を示す「ストローク量」が最大になっていたことが挙げられており、これにより車輪への圧着力が低下し、ミニホキのブレーキが正常に機能せず、編成全体にブレーキが作用しなかったことがトラブルに繋がったとされている。

JR北海道では、ストローク量の確認がルール化されていないことや、保線作業用機械に関する教育が不足していたこと、点検・整備を直轄で行なう際の体制が弱いこと、補助ブレーキなどの性能が低いことがトラブルの引き金になったとしており、当面の対策として、軌道モーターカーやミニホキを使用する作業を一時禁止し、再開する場合は双方に対してシリンダーストロークの緊急点検と制輪子の点検を実施し、作業の都度、ストローク量の測定と記録、ブレーキ試験を行なうと発表していた。

その後、軌道モーターカー135台、ミニホキ57両のうち、全般検査中のものと当面使用しないものを除いて緊急点検が行なわれたが、その結果、軌道モーターカーでは12、ミニホキでは14の要調整箇所が確認され、7月9日時点でそのすべてが整備済となっている。

軌道モーターカーについては車軸のディスクブレーキも点検され、3つの要点検箇所が確認されたが、こちらも整備済で、JR北海道では「当面の対策に関する社員への周知・指導」を行なった上で、準備が整ったものから順次使用を再開するとしている。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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