今月(2020年12月3日)、新聞各紙が「2030年前半にガソリン車の販売を禁止する」という、日本人にとって衝撃的なニュースを伝えた。自動車産業に身を置くものとしては、「やっと日本政府も腹を括ったか」という感想だが、従来ガソリンエンジン至上主義でやってきた日本人にとっては大きなインパクトとなった。
CASEによる大変革期
自動車産業は、100年に一度の大変革の時代に突入したといわれている。この数年、当業界における大きなニュースが数多く発信されている。特にCASEというワードは、自動車産業にとって最も注目されるものであり、世界の自動車メーカー大手各社は、決して見逃すわけにはいかない、いわばMUSTの取り組みテーマである。
2017年以降、自動車先進国の各国で、ガソリン車の販売禁止など、「自動車の電動化シナリオ」が続々と発表された。 その当時、トヨタは静観している状況にあった。翌年2018年1月、豊田章男社長自身の言葉で、「トヨタは自動車メーカーから、モビリティ企業に変身する」と発表した。それ以降トヨタのCASE戦略は臨戦態勢に入ったと言える。
昨年5月(2019年5月)ルノーとFCAが合併するという話が出て直後に立ち消えた。その半年後、11月(2019年11月)にFCAはPSAと経営統合することで急転決着した。また、一部メディアよりリークされた情報、「日本政府関係者が2019年末に日産自動車とホンダの経営統合を模索」とは裏腹に、今年9月(2020年9月3日)には、ホンダと米ゼネラルモーターズ(GM)が、「北米での戦略的アライアンスに向けて合意」について正式に発表した。
変革期ならではの、二転三転したビッグニュースである。自動車産業は、合従連衡の「戦国時代」に突入しているのである。どこのメーカーとどこのメーカーが、合併しても、あるいは合併を解消してもサプライズにならない。いわば「何でもあり」の時代なのである。
自動車開発には、一般的に巨額の研究開発投資が必要である。しかし、CASEの実現には各方面、少なくとも4つのフィールド、すなわちコネクテッド、自動運転、サービス、電動化、に巨額の投資を行う必要がある。したがって、トヨタ、VW、ルノー日産のような巨大企業であろうとも、他社との協業により効率よく投資していかねば、ポジションを取ることはできないと言わざるを得ない。
それでは、どのような協業スキームを創り、CASEを実現していくか?その産業に自社のポジションを確立していくか?それは、企業の大小に関わらず、また「自動車メーカー」「電気メーカー」「部品メーカー」という専門分野の垣根、あるいは、「IT企業」「サービス業」「金融業」など、非自動車企業も含めた協業体制(アライアンス)が必要になる。本レポートでは、貴社にとって、アライアンスを含めたCASE戦略に関わるシナリオ作成の一助となることを期待している。