MaaS先進国にむけて、モバイルチケットから日本を変える…ジョルダン戦略企画部部長 佐藤博志氏[インタビュー]

MaaS先進国にむけて、モバイルチケットから日本を変える…ジョルダン戦略企画部部長 佐藤博志氏[インタビュー]
  • MaaS先進国にむけて、モバイルチケットから日本を変える…ジョルダン戦略企画部部長 佐藤博志氏[インタビュー]

乗換検索大手のジョルダンはMaaSをどのように捉えているのだろうか。ジョルダン戦略企画部部長の佐藤博志氏に聞いた。

MaaSの先進自治体と企業が集まるネットワーキングセミナー第2弾は11月20日開催。詳細はこちらから

海外で普及しているモバイルチケット

佐藤氏:世界各国に行きましたが、日本のように人口が多い都市部のみならず、地方までしっかり公共交通のインフラが張りめぐらされて、尚且つ定時運行している国は凄まじいと思います。学生の時に留学していたシドニーや、またニューヨークといった都市でも、事故は無くても電車は数十分遅れるのは当たり前でした。

そんな他の追随を許さない高い水準の交通インフラを持つ中、MaaSという観点から改めて移動を見直すと、いつのまにか交通の分野で先進国でなくなってきているイメージがあります。その1つの要因として、海外では一般的になりつつあるスマートフォンでクレジットカードやQRコードを使って決済をする“モバイルチケット”の活用が遅れていることではないかと考えています。

モバイルチケットは欧米ではすでに普及しています。

---:欧州では公共交通のアプリがあって、スマホで決済ができて乗車できます。長距離バスも検索、予約、決済、乗降時の確認もスマホでできましたし、多言語対応は当たり前でした。

佐藤氏:交通系ICカードに加えて、経路検索・多言語対応・モバイルチケットの一本化が進めば、日本のハードとソフトは最強になるのではないでしょうか。モバイル端末の普及に後れを取っていた中国が、モバイル決済で先進国になったように、日本も後発でMaaS先進国になれると思っています。

支払いがしにくい日本の公共交通

佐藤氏:少し都会を離れると、路線バスは運賃箱をバスの前方のドライバーの横に設けて、現金で払うようになっています。我々が海外旅行に行ったときにもなかなか現地の通貨が覚えられないように、訪日旅行客も日本の通貨を使いこなせないので、そこはデジタルに支払いたいと思ってしまいます。高速バスも、例えば乗換案内で検索した後、ネットで購入予約して、予約番号を持ってコンビニで支払いに行ったり、あるいは車内支払いしようとした時は、クレジットカードやモバイル決済に対応していない場合、財布の中に現金がない場合もあったりして、支払いは簡単ではありません。

ですから、我々の乗換案内であるとか、Googleマップなどで経路検索をした際に、その場でチケットの購入ができて、使えるようにした方がよいのではないでしょうか。

---:日本では都市部を除くバス会社は赤字経営が続いているため、交通系ICカードの導入コストが高く、決済システムを導入できないことが一つの大きな要因だと一般的に言われていますね。

佐藤氏:ジョルダンが選択したことは、モバイルチケット先進国の中でも、長く事業を続けていて、実績も豊富な海外企業とのパートナーシップを組むことです。世界4大陸、40社以上にモバイルチケットのサービスを提供している「Masabi(マサビ)社」とパートナーシップを締結し、日本における総代理店になりました。

導入しやすく多機能なMasabi社のモバイルチケット

---:Masabi社の製品の特長を教えてください。

佐藤氏:チケットの読み取り機をバリデータ―と言いますが、Masabi社はバリデータ―も独自開発していて、Masabi社の二次元コードのみならず、非接触のクレジットカードも読み取れますし、今後Suicaなどの交通系ICカードも読めるようにできます。導入コストも魅力で、日本の地方の交通事業者が抱える課題も解決できます。

バリデータの端末のサイズも小さいです。公共交通向けに作っているのでMasabi社製品の認証速度も非常に速く、Suica程ではないですが、Masabi社は平均0.3秒くらいです。また二次元コードは約5秒に1回変えることができるので、スクリーンショットによる不正利用も防止できます。

スマホで決済するモバイルチケットなので、バリデータの端末を置かずに、目視確認で済ませる方法もあります。目視確認の場合は、バリデータの設置が不要なので、導入コストがかかりません。ラスベガスのバスは、バリデータを導入する前に、本当にモバイルチケットがうまくいくかどうかを確認するために、目視確認の方法をまず導入しました。目視確認でも正確に確認できるように、利用者のスマホの画面の文字が動いて、時間帯によってランダムに色が変化するので、3人乗って来て色が違うと気づくような工夫がされています。バリデータを使用した際には、乗降データ、購買行動、利用者属性などもデータで把握することができます。

もちろんモバイルチケットは多言語対応していきます。

---:デジタル化や取得したデータ活用の遅れている地方の公共交通にとって救世主になるかもしれませんね。

利益もデータも独占しない“J MaaS”

ジョルダンは、利益もデータも独占したくありません。日本の国益のために、モバイルチケットを進めたいと思っています。そこで利益を分かち合い、取得したデータ共有し合う非独占的な企業体連合を目指し、J MaaSを2018年7月に設立しました。

欧州の悲劇を日本で繰り返さないために

佐藤氏:モバイルチケット先進国のイギリスで起こっていることから、日本は学ぶべきです。イギリスでは、いろいろなアプリが乱立していて、日本に例えると、長野に行くなら長野アプリ、沖縄に行くには沖縄アプリをダウンロードして、それぞれクレジットカードなどの情報を入れないといけないような状況になっています。1つ登録しておけばどこでも行けるような状況にできるようにした方がよいのではないでしょうか。

---:ドイツなどもイギリス同様にアプリが乱立していてバラバラで使いにくい状況になっていますね。日本の方が検索しやすいと感じる国もあります。

MaaSの先進自治体と企業が集まるネットワーキングセミナー第2弾は11月20日開催。詳細はこちらから

《楠田悦子》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集