新機能性材料展で面白いデザインの自転車を見かけた。それも木製のクロスバイクだ。家具メーカーとして知られた山形の天童木工が作ったもので、東北の粘土を用いた技術を中心とした産総研コンソーシアムClayteamの共同ブースに展示されている。
「これはRPW+(ロール・プレス・ウッド・プラス)、従来のRPWがスギやヒノキなどの軟質針葉樹の薄板を圧縮して貼り合わせたものなんですが、それに薬剤を染み込ませて機能を高めた素材でできています」。そう教えてくれたのは、天童木工のホームユース事業部部長、永坂英樹さんだ。
美しい曲線を描くプライウッドは60年前から天童木工のもつ技術だが、RPWはさらにプライウッドの合板に圧力をかけて40から50%に圧縮して強くする技術。さらにに薬剤を染み込ませることで、新たな機能を付加することを可能にしている。例えば防炎処理を施すことで難燃材とすることも可能なんだとか。このクロスバイクに使われている木材では耐候性を高める処理が施されており、屋外でも木製家具が長く楽しめるようになっているそうだ。クロスバイクを製作したのは、その耐久性を証明するためだそうだ。
天童木工は未だに50年以上前にデザインされた家具が人気で、日本ではソファやイージーチェア、欧州ではデザイン性の高い柳宗理のバタフライスツールなどが人気だと言う。ちなみにレクサスのステアリングホイールにも同社の木工技術は利用されている。
このクロスバイクは昨年11月にパリの見本市に出展するために製作したもの。ハブやギア部分以外はほとんどが木製で、十分な強度を誇りながら重量も12kgと軽く仕上げられている。ホイールなど部品を作るのは熟練の職人たちでわけなく可能だったが、自転車に関する知識を持つスタッフが少なく、社員の中に元自転車部の人間がいることから組み立てることができたとか。
デザインは社外の若いデザイナーによるものだそうだが、プライウッドの美しい曲線を活かした仕立ては、何とも優雅でレトロ感もある。竹やその他の木材製自転車のオーナーなどから、ホイールの引き合いもあるそうだ。ステアリング回りの剛性が不足気味だと言うが、そこさえ解決できれば商品としても十分通用しそうである。ただし同社の家具同様、それなりのお値段にはなりそうだ。