三菱重工業は、米国大手電力会社のサザンカンパニーと共同で進めてきた石炭火力発電所排ガスからのCO2回収・貯留実証試験で、当初計画分の試験を、大きな成果を達成して完了したと発表した。
排ガス中に不純物が多い石炭火力を対象とした大規模なCO2回収・貯留の実用化にメドがついたとしている。三菱重工は今回の成果によって、石炭焚き排ガスからのCO2回収技術商用化の取り組みを加速する。
今回のプロジェクトは、石炭火力を対象に、世界で初めて1日当たり500トン規模のCO2回収と貯留を一貫して実施したもの。三菱重工は、サザンカンパニーと共同で、アラバマ州にあるバリー火力発電所内にCO2を分離・回収・圧入する実証プラントを建設した。
2011年6月からプラントの実証運転をスタートし、石炭焚き排ガスからのCO2回収技術・性能を検証し、2012年8月からはCO2回収・貯留一貫実証試験を開始した。その後、大規模なCO2回収プラントによる高性能な連続安定運転を実現した。
実証試験に用いたCO2回収プラントは、三菱重工がサザンカンパニーと共同で建設した世界最大規模の装置で、排ガスの前処理設備(脱硫)、CO2吸収・再生設備、CO2圧送設備、ユーティリティー設備などで構成する。CO2回収能力は年間15万トンで、CO2回収率は90%超。
CO2回収では、三菱重工が関西電力と共同で開発した高性能な吸収液「KS-1」を用いた「KM CDR Process」と呼ばれる、他の方式に比べエネルギー消費量が大幅に少ないプロセスを採用した。
サザンカンパニーとの当初計画分の共同実証プロジェクトは、昨年12月に当初の目標を達成して完了したが、今後の共同実証計画に関しては現在、同社と協議中。
天然ガス焚き排ガスからのCO2回収技術はすでに商用化されており、三菱重工はこの分野で世界トップクラスの実績を持つ。また、排ガス中に煤塵などの不純物が多い石炭焚き排ガスからのCO2回収についても、これまで国内外でCO2回収・貯留実証試験へ参画してきた。今回、大規模CO2回収・貯留一貫実証試験で所期の目標を達成できたことから、今後、この分野でも他社に先駆けて信頼性と経済性を持つ商用技術の確立を目指す。