「来年はもっとたくさんの島民でお台場に行こう」
昨年、お台場では初めて行われた「WERIDEチャレンジ三宅島 モーターサイクルフェスティバルinお台場」で、来場した島民が、労い酒を酌み交わしながらこんな決意をしていた。昨年7月6日、帰路に着く前のことだった。
5月17日、このイベントのためにやって来たのは島民92人。ほとんどがボランティアだった。イベント内の伝統芸能や島の名物のPRをするためだ。今年の参加者は昨年の70人を上回った。
都心を訪れる彼らが利用するのは、片道6-8時間かかる大型船だ。三宅島から竹芝旅客ターミナル(港区海岸)を結ぶ船は1日一往復。人といっしょに島の名物を積んで、午後に三宅島を出発。ターミナルそばにある島嶼(とうしょ)会館で一泊し、翌朝7時には会場に来て仕込みを始める。
連合青年団や商工会女性部が作るのは、伊勢エビの味噌汁、明日葉の天ぷら、ところ天、サザエの壺焼き、くさや焼きなど多彩だ。どれも島の食材を使い、100円から500円程度と格安で、来場者の空腹を満たしている。
「伊勢エビを入れたお味噌汁は、途中で実がなくなってしまって200円を100円にしたんだけど、それでも昼過ぎには売り切れてしまいました。味は後のほうが伊勢エビの出汁が出ておいしいんだけどね」(商工会女性部の一人)
連合青年団が担当するのは、海産物の炭火焼きだ。三宅島でとれるサザエは成人男性の拳の大きさがある。
今年は、島の特産品を販売するブースも大きくなった。06年の帰島を記念して三宅村が企画した芋焼酎「喜島三宅」(きとうみやけ)は、石原都知事がラベルの文字を書いた。焼酎に使われるサツマイモは島の特産だ。
「喜島三宅」は鹿児島県の酒造メーカーに製造委託したが、翌年には島内で麦焼酎「雄山一」(おやまいち)を作るまでに三宅島は復興した。
復興の歩み象徴する2本の焼酎が、三宅島振興を願うオートバイイベントで同じ場所に並んでいた。