4日に発表された新型フィアツト500、筆者が試乗したのは、「1.2スポルト」仕様だ。室内のマテリアルの質感は、ベースである『パンダ』以上・姉貴分の『グランデプント』未満といったところである。
ボディと同色のダッシュボードは“元祖”チンクエチェントのスチール製を模しているものの、新型では安全上もちろんプラスチックパネルだ。
スタイリングが優先されたためか、サイドウィンドーの天地は若干狭く感じなくもない。ただし、周囲の視界に問題はない。後席の定員は2名で、大柄な乗員にはさすがにヘッドルームが不足するが、身長166cmの筆者にはさほど苦でなかった。
走り出してすぐにわかるのは、姉妹車がパンダであるとは信じられない上質なボディ剛性だ。サスペンションも、パンダより特に後輪の突き上げが少ない。日頃通過するのが苦痛なトリノの石畳も、それほどストレスを感じさせなかった。
1.2リットル8バルブ・69馬力エンジンは、ラインナップに用意された3タイプのエンジン中、最小である。“踏めばトルクの泉湧く”ので、少々アグレッシヴなイタリア人ドライバーたちが溢れる中でも充分リードが可能だ。いっぽう市街地では、これまたそのトルクゆえ、変速をちょっと怠っても、それなりに許容してくれる。
新型500は、過去のフィアット小型車のイメージを払拭してくれる充分に今日的なクオリティを、リーズナブルな価格で実現している。ファニーな見た目とは対照的に、きわめてまじめな車だ。
心配なのは、初代パンダのチープさに修行者的快感を得ていたような、イタリア小型車ファン原理派(?)は複雑な心境に陥るに違いない、ということである。