毎年のジュネーブモーターショーには、イタリア人も国境を越えてたくさんやって来る。トリノからだと、モンブラン・トンネルを使ってフランス経由で250km、約3時間半で到達できるからだ。
ただし今年は彼らにとって、ちょっした受難の年となった。プレスデイを3日後に控えた3日午前、トンネルに導くフランス側の国道で、突然崖崩れが発生したためだ。奇跡的に怪我人はいなかったが、土砂は上下両車線を塞いだ。
通行止めは一般公開が始まった8日以降も続き、ようやく復旧したのは、土砂崩れ発生から1週間後の10日夕方だった。
モンブラン・トンネルは1965年開通。総延長11.6kmの上下各1車線・対面通行である。1日あたり約4700台が通過する幹線トンネルで、往復料金は乗用車が39.7ユーロ(約6000円)。
今回のモンブラン通行止めで、イタリアからのモーターショー客は、他の伊仏間トンネルに回らざるを得なくなった。たとえば、モンブランより西にあるフレジュス峠のトンネルは90km近い遠回りだが、迂回車による渋滞が上下線で発生した。
またモンブランの東、「セントバーナード犬」由来の地であるグランサンベルナール峠のトンネルも迂回路となった。
日頃はトンネル前後の国道アクセスが良くないことから、ジュネーヴ行きのイタリア人はあまり使わないルートだ。そのためトンネルを運営する公団は例年、「モーターショーの半券を見せれば、復路はタダ」キャンペーンを実施して、必死の通行車呼び込みを図っていたほどである。
いずれの迂回トンネルも、雪不足で通行客の減少に悩んでいたところ、モンブラン閉鎖で思わぬ“たなぼた”に恵まれたかたちだ。