年間76万本販売のタイヤは証拠にできない

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2001年8月、埼玉県新座市内の国道254号線で、65歳の男性をひき逃げして死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた29歳の男性に対し、さいたま地裁は8日、「犯罪の証明がない」として無罪判決を言い渡した。

問題の事故は2001年8月22日に発生している。同日の午後11時35分ごろ、埼玉県新座市大和田3丁目付近の国道254号線で、65歳の男性が道路を横断しようとした際、中央分離帯の段差につまづいて転倒。走行してきたクルマにはねられて死亡したが、クルマはそのまま現場から逃走した。

警察では死亡ひき逃げ事件として捜査を開始。1年後の2002年10月に27歳(当時)の男性を業務上過失致死と道路交通法違反(ひき逃げ)で逮捕。

男性は事件への関与を否定したが、警察では目撃証言やタイヤ痕から「男性が関与したことは間違いない」と判断。検察もこれを支持するかたちで起訴し、論告では禁固1年を求刑していた。

8日に行われた判決公判で、さいたま地裁の若原正樹裁判長は、警察や検察が最大の根拠としていたタイヤ痕について、「被告のクルマに装着されていたタイヤは年間76万本が出荷・販売されており、タイヤ痕のみで被告の関与を認め、加害を断定するには慎重な捜査や鑑定が必要だったにも関わらず、それが行われていない」と、タイヤ痕は被告関与を証明する証拠にはなりえないとした。

また、被告のクルマに同乗していた人物は衝撃音を聞いておらず、最初の119番通報についても「男性が倒れている」という内容だったことを示した上で、「通報者は被告のクルマよりも前を走っていたという検察側の主張は完全とはいえず、通報者が被告のクルマよりも後方を走っていた可能性もある」と指摘した。

さらには「被告の後方を走っていたクルマの運転者も路上に倒れていた男性を目撃しているが、このときも被害に遭った様子は確認されておらず、結果として被告の犯罪関与を証明するものがない」として、被告無罪の判決を言い渡している。

《石田真一》

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