米主力ロケットのロシア製エンジン、代替エンジンをエアロジェット・ロケットダインが開発へ

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AR1エンジンシングル形態
  • AR1エンジンシングル形態
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  • GPS IIF衛星を打ち上げた際のAtlas Vロケット

2014年10月1日、米エアロジェット・ロケットダイン社は、米空軍に対し米主力ロケット『Atlas V(アトラスV)』の第1段に搭載しているロシア製エンジン『RD-180』代替エンジンの製造について回答したと発表した。

エアロジェット・ロケットダイン社は、米空軍からの公式の要請に応じて提案書の提出と個別会談に応じ、防衛衛星を含む政府系衛星の打ち上げコストを低減するシステムを、海外製ロケットエンジンに頼らずに可能になると回答したという。同社による新型の『AR1』エンジンは50万重量ポンド(2224キロニュートン)級の推力を持つ液体酸素・ケロシンを推進剤とする液体燃料ロケットエンジンで、現在主力の液体酸素・ケロシンを推進剤とするRD-180エンジンの代替になるとしている。

20年以上にわたってエアロジェット・ロケットダイン社はアメリカの国産ロケット用にエンジンを提供しており、「RS-68」や上段エンジン「RL10」、「J-2X」などの開発製造の経験を持つ。AR1エンジン開発にはこうしたこれまでの経験や素材、技術者、既存の施設などを活かすため短期間で開発できるという。新型AR1エンジンの飛行認証は2019年までに予定されている。

AR1エンジンをアトラス Vに搭載するにあたって、改良は最小限で済み、また既存の地上施設や打ち上げ施設を活かすことができる。AR1は他のロケットへの応用も容易で、政府系または商用ロケットの新規開発にも活かせるとしている。

発表2日前の9月29日には、アトラスVロケットを運用するロッキード・マーチンとボーイングの合弁会社ULA(United Launch Alliance )とエアロジェット・ロケットダインの2社でAR1を含む複数のロケットエンジンを米主力ロケットEELV(発展型使い捨てロケット)へ応用するための開発支援で合意している。2週間ほど前の9月17日に、ULAは米Amazon.comのジェフ・ベゾスCEOが設立した宇宙開発企業ブルー・オリジンと、EELVに利用する新型のLNG(液化天然ガス)ロケットエンジン「BE-4」開発で合意している。BE-4も55万重量ポンド級の推力をもつエンジンで初飛行は2019年の予定だが、発表文書の表現ではBE-4はRD-180を直接置き換えるものではなく、ULAの次世代打ち上げ機に使用されると述べている。アトラスVへの搭載について明確な表現はなく、RD-180エンジン代替の本命はAR1の可能性が高い。

《秋山 文野》

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