GMは3日、5月1日をもってボブ・ラッツ副会長が勇退すると発表した。米ビッグ3やBMWを渡り歩いたカリスマは、自動車業界47年のキャリアに終止符を打つ。
ボブ・ラッツ氏は、1932年スイス生まれで、現在78歳。1954 - 59年、米海兵隊に所属し、パイロットとして働いた。
ラッツ氏の自動車業界でのキャリアは、1963年、GMヨーロッパから始まる。1971年にはBMWへ転職。そして1974年、フォードへ入社し、副会長にまで出世した。ところが1986年、ライバルのクライスラーへ電撃移籍。GMのシボレー『コルベット』に対抗できるスポーツカー、ダッジ『バイパー』や、レトロブームの火付け役となった『PTクルーザー』の開発を主導した。
ここで終わらないのが、ラッツ氏。1998年にはクライスラーを去り、自動車業界から離れていたが、2001年9月、今度は再び、GMへ入社。シボレーやキャデラックブランドの再生で成果を上げた。現在、米国で人気のシボレー『カマロ』やキャデラック『SRX』は、ラッツ氏の元で生み出されたモデルである。また、2011年発売予定のプラグインハイブリッド車、シボレー『ボルト』も、同氏が開発の指揮を執っていた。
実はラッツ氏は2009年2月、引退を表明していた。しかし5月末、GMが経営破たんするという非常事態が発生し、職にとどまった。ラッツ氏は、一大広告キャンペーン「MAY THE BEST CAR WIN」を仕掛け、GM車の販売落ち込みを最低限に抑えて、その後の経営再建の足がかりを作った。現在、GMでは副会長兼シニアアドバイザーを務めている。
GMのウィッテーカー会長兼CEOは「GM車のデザインや生産・販売面において、ラッツ副会長の功績は非常に大きい」と労をねぎらい、ラッツ副会長は「GMへ再入社して9年。やり残したことはない」と、コメントしている。