フィアットがお宝放出、失われるパトロン精神

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水の都ヴェネツィアでは、先週末から有名なカーニバル(謝肉祭)が始まった。ところが、あたかもそれに合わせたかのようなタイミングで、フィアットは「お宝」のひとつを手放した。

話題の物件は、ヴェネツィアにあるグラッシ宮殿。18世紀初頭、同名の貴族のために建設されたものだ。フィアットは1984年、この宮殿を1億4977万ユーロで買収。2年かけて改装したのち美術館として使用してきた。

今回フィアットは2890万ユーロ(約39億円)で、市営カジノに宮殿を売却した。買収額の5分の1以下で手放したことになる。

グラッシ宮殿はフィアットの繁栄を示す一シンボルだった。同時に、とかく中世ルネッサンス美術にスポットが当てられがちなイタリアにおいて、未来派・現代美術を積極的に採り上げるミュージアムとして高い評価を得ていた。

ちなみにフィアットは、戦前に造られた旧本社工場「リンゴット」を80年代初頭から約20年がかりで改修。工科大学の自動車学科も包括する複合文化施設として再開発した。しかし、こちらも一昨年、大部分の売却が済んでいる。

イタリア文化を陰で支えてきたフィアットだが、大らかなパトロン精神が許されぬところまで今や台所事情が切迫しているのは残念である。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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