
~耐摩耗性能を向上させたタイヤ開発に活用へ~ ~破壊に繋がるゴム内部構造の分布の違いを三次元的に可視化~
発行:2025年7月23日
住友ゴム、京都大学とゴム内部構造の三次元可視化に成功 ~耐摩耗性能を向上させたタイヤ開発に活用へ~ ~破壊に繋がるゴム内部構造の分布の違いを三次元的に可視化~
住友ゴム工業(株)(社長:山本悟)は、京都大学化学研究所の小川紘樹准教授と協働で、破壊に繋がるゴム内部構造の分布の違いを三次元的に可視化することに成功しました。ゴムが破壊される際の内部構造の変化を詳細に観察する事を可能にしたものです。従来はゴムを変形させた際にどこで破壊が始まり、その破壊の原因となる内部構造がどのように関係しているのかを特定する事ができませんでした。
今回の結果は、ゴム材料の様々な知見を有する当社とゴム内部構造の分布の違いを三次元的に可視化する技術を有する京都大学化学研究所との産学連携の協働プロジェクトにより実現しました。
今後、この研究成果を活かし、耐摩耗性能を高めたタイヤの開発を進めることで、安全性の向上と環境負荷の低減に貢献してまいります。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507232577-O1-2OPg8D9u】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507232577-O2-00OT41o0】
図1:これまでの計測手法と今回の計測手法の違い
当社はこれまで、大型放射光研究施設「SPring-8」※1を活用し、ゴム内部構造を詳細に解析することで、低燃費性能や耐摩耗性能に優れたタイヤゴム材料の開発を行ってきました※2。
タイヤゴムの内部構造は、骨格となるポリマー、補強剤であるシリカやカーボンブラック、機能を向上させる添加剤や架橋剤など十数種類以上の材料から構成されています。従来の方法※3では、X線が通過した部分におけるゴム内部構造の平均的な情報となってしまうため、ゴムを変形させて破壊が発生してもX線が通過した部分のどこで破壊したのか特定することができませんでした(図1)。
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そこで当社は、京都大学化学研究所の小川紘樹准教授が開発した、ゴム内部構造の分布の違いを三次元的に可視化する新たな計測手法 ※4 を用いて 2023 年 5 月から協働プロジェクトを進めてきました。この手法により、「ゴムを変形させた際にどこで破壊が始まるかを三次元的に捉えることに成功し、その破壊にはポリマーとシリカが特殊な状態(部分的に並んだ状態)に変化しゴムの破壊が始まるという現象を捉える」ことに成功しました。(図 2 )
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507232577-O6-lzDn85A9】
図2:ゴムの破壊に繋がる内部構造の分布の違いを可視化
今後は、本研究成果をゴム材料開発に活用し、耐摩耗性に優れ、安全・環境負荷低減に貢献するタイヤの開発を推進してまいります。
EVの普及による車両重量の増加や、省資源など環境負荷低減への関心が高まる中、より長持ちするタイヤへのニーズが高まっています。当社は長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」において、強みである「ゴム・解析技術力」と「ブランド創造力」によって「ゴムから生み出す“新たな体験価値”をすべての人に提供し続ける」ことを目指しています。今回の成果は、産学連携と最先端研究施設の活用により、「ゴム・解析技術力」の強化を実践したものです。
なお、本研究は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進するプロジェクト「NEDO先導研究プログラム」※5の一環です。また、研究成果は国際学術誌「Small Structures」※6に、7月22日付で掲載されました。
<ご参考>
・長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」
https://www.srigroup.co.jp/newsrelease/2025/sri/2025_014.html
・「Small Structures」掲載論文 H. Ogawa, et al. Small Struct. 2500257 (2025).
https://doi.org/10.1002/sstr.202500257
※1 世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設(兵庫県佐用郡佐用町)
※2 高性能・高品質タイヤの新材料開発技術「4D NANO DESIGN(フォーディーナノデザイン)」を確立- 地球環境への配慮と安全・安心を両立するタイヤの開発を加速 -(プレスリリース) http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2011/111212/
※3 小角X線散乱(SAXS)法: X線を物質に当てて、その跳ね返り方(散乱)を観察することで、物質の中の構造を調べる方法
※4 小角X線散乱コンピュータトモグラフィー(SAXS-CT)法:CTスキャンのように物質の周りからX線を当てて、物質に含まれ
る材料によって散乱されたX線を観察することで、物質中の材料の配置を可視化する手法。またX線透過率も計測することで、物質の密度を可視化したCT画像(通常のX線CTスキャン画像)も同時に得ることができる。
※5 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進する、脱炭素社会の実現や新産業の創出に向けて、2040年以降(先導研究開始から15年以上先)に実用化・社会実装が期待される要素技術を発掘・育成し、国家プロジェクトを含む産学連携体制による共同研究等につなげていくことを目的とする制度。今回の研究は「新産業・革新技術創出に向けた先導研究プログラム」のひとつ。
※6 「Small Structures」は、化学、物理・材料科学、工学、生命科学などの分野において、サブマクロ構造(マクロスケール未満の微細構造)に関する先端的な研究成果を発信する高品質な専門ジャーナル。