【再生可能エネ世界展示会2017】FREA、トルエンに水素を溶かして運ぶ水素キャリアを実証実験中

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FREAが実証実験中の水素キャリア製造・利用統合システムの模型
  • FREAが実証実験中の水素キャリア製造・利用統合システムの模型
  • MCHによる水素キャリアを繰り返すと、グラフのように副生成物が生じてくる。今後は、この対策も研究することになる。

燃料電池の燃料として、水素はこれから普及していくことが計画されているが、未だに解決しなければならない課題も少なくない。その一つが輸送である。輸送が必要ないオンサイト型の水素ステーションでは大規模なプラントが必要であるし、オフサイト型の水素ステーションでは水素自体を輸送してもらう必要があるのだ。

現在は高圧状態のボンベで輸送するか、絶対零度まで冷却して液化して運ぶかしか方法はない。再生可能エネルギー世界展示会(5~7日、パシフィコ横浜)に、新たな解決策が提案されていた。

国立研究開発法人 産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)では、様々な再生可能エネルギーを利用して、新たなエネルギー利用の方法を研究している。その水素キャリアチームが現在実証実験中の水素キャリア製造・利用総合システムの模型とパネルを展示していた。

水素キャリアとは、水素を大量にかつ安全に保管及び運ぶためのシステム。具体的には有機溶剤であるトルエンを媒体として使い、トルエンに水素を結び付けたMCH(メチルシクロヘキサン)として運び、利用する段階で再び水素を取り出し、トルエンを再び水素を製造する場所まで戻して再利用するというもの。

説明員によれば、トルエンは水素を取り込む能力が高く、1Lのトルエンで600Lの水素を運ぶことが可能だとか。80MPaの高圧タンクでも800分の1にまでは圧縮できないだろうから、これはなかなか高効率だと言える。

実証実験ではソーラーパネルや風力発電で作った電力を使って水を電気分解して水素を作り、トルエンに取り込ませてMCHを作りタンクに貯蔵する。それを再び実験棟内に取り入れ、水素を取り出してコージェネエンジンで発電して、トルエンを回収すると言うもの。

現在はMCHの繰り返し利用による生成物及び副生成物の生成挙動などを把握している状態だとか。水素化と脱水素化を繰り返すとトルエンから様々な化合物が生じるのだ。実験の結果、大幅に増えていくのはベンゼンだということが分かっており、今後はその対策を研究することになるようだ。

安定的に水素を貯蔵、運搬できるようになれば、再生可能エネルギーとしての利用は大きく広がるに違いない。実用化に向けた今後の研究開発を見守っていきたい。

《高根英幸》

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