リコール騒動に揺れるGM

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GMジャパン コミュニケーションズ・ディレクター ジョージ・ハンセン氏
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No more Crappy cars!

ビッグ3としての初の女性CEOメアリー・バーラ氏の就任や、その直後に巻き起こったリコール問題など、現在、話題を集めるGM。しかし、その日本法人のことは、案外と知られていないもの。そこで、最近のGMとその日本国内における拠点である(GMジャパン)の現状を、コミュニケーションズディレクターであるジョージ・ハンセン氏に聞いてみた。

「No more Crappy cars(ボログルマはもうやめにしましょう!)」とハンセン氏は、CEO就任前となる商品担当時代のバーラ氏の言葉を引用して、リーマンショック前後のGMの状態を説明する。

「リーマンショックの前にGMがアメリカで売っているクルマはおもしろみがなかったんですね。ブランド力も含めて、レンタカーのようなものでした」とハンセン氏。

「いわゆる大企業病だったんですね。ずっと世界ナンバー1の自動車会社であり、“古くからこうであったから、こうあるべき”というようなことがあちこちにありました。ブランドも多すぎました」

また、アメリカでのプロモーションも、「今週末は値引きします!」「低金利ローンを用意」といったものばかり。さらに利益率の高いピックアップトラックなどにリソースを集中し、コンパクトカーの品揃えが不足するなどの問題もあったという。

そうした危機感からGMの内部では、「顧客をちゃんと見た、強い商品力のクルマを作らなければいけない」という考えがリーマンショック以前からあったとハンセン氏は説明する。先ほどの「ボログルマはもうやめにしましょう!」というバーラ氏の発言も、そうした流れの中で生まれた言葉であった。

しかし、不運にもGMが変革を成し遂げる前にリーマンショックが到来。GMは破綻する。だが皮肉にも、破綻によって変革が一気に加速。高コストの労使問題解決やブランドの整理などを推し進めた。そして、日欧のライバルに負けない商品力を目指して生まれたグローバルモデルのシボレー『クルーズ』や『ソニック』『スパーク』、そしてキャデラック『ATS』『CTS』などの新型モデルたちは、世界中で高い評価を得ている。新生GMはリストラを経て、再生への道を歩み始めたのだ。

◆ドイツ車勢と同じ土俵で勝負をしたい

ひるがえって日本のGMはどうか? 奇しくもアメリカの本社と同様な道程をたどっているように見える。1990~2000年ごろのGMは、キャデラックやシボレーだけでなく、ビュイックやポンティアック、サターン、ハマー、オペルなど、実に多くのブランドを日本に送り込んでいた。しかし、現在は、それらをシボレーとキャデラックのふたつにまでに整理。現在は、キャデラックのATSやCTS、シボレー『キャプティバ』などの、新世代モデルが主力モデルになっている。リストラを経て新生GMとしての新たな道を歩み始めているのだ。

「現状のGMジャパンは、ニッチ狙いです。コツコツやっていきます」とハンセン氏。

メルセデスベンツやBMW、VWといったドイツ勢ではない、別の選択をしようというニッチなニーズに応えたいというのだ。そうしたとき、商品力を高めた新世代モデルの存在がキーになる。

「かつてアメリカ車は別枠でした。アメリカ車だから~という具合に、ドイツ車と同等に見られていなかった。しかし、今は違います。メルセデスベンツやBMWを買う前にキャデラックに乗って欲しい。ポルシェを買う前にコルベットに乗って欲しい」とハンセン氏。かつてのGM車は、ドイツ車と比較にならないため、「アメリカ車だから」という別枠で見られることが多かったが、新世代モデルは違うという主張だ。

ハンセン氏の言うように、確かにGMの新世代モデルは、かつての「大きくて」「(乗り心地が)フワフワ」「燃費が悪い」というアメリカ車のイメージを覆すものである。インテリアは精緻で高品位。最先端のテクノロジーも積極的に採用する。燃費性能もドイツ車や日本車に大きく水をあけられるということはない。

◆日本国内のリコール対象はシボレー HHRの173台

しかし、長年かけて形成されたアメリカ車のイメージを変化させるのは非常に困難なことでもある。また、ドイツ車や日本車と同等のクオリティを備えたということは、ここで初めてスタートラインに並んだことを意味する。本当の意味での競争は、ここから始まるのだ。商品力の高いモデルを、これから先も継続的にリリースし続けることが、なによりも重要だ。しかも今、GMは本国の米国においてリコール問題で揺れに揺れている。

その余波は、日本にも及ぶのだろうか。「今回の問題に該当する車種で、日本にあるのは1車種だけです。それは三井物産オートモーティブが輸入していたシボレーHHRです。173台が日本にあります」とハンセン氏。

シボレーHHRは2000年代後半に三井物産オートモーティブが日本で販売を行ってきたモデルだ。GMジャパンが輸入したモデルではないが、正規輸入車ということで、その対応はGMジャパンが担うという。そしてGMジャパンは2014年3月20日に、シボレーHHRについてのリコールの届け出を行った。

その不適合の内容は「イグニッションスイッチの回転抵抗が設計値を下回っているため、イグニッションキーにキーホルダー等を装着していると、走行振動等により、イグニッションキーが"RUN"位置以外に動いてしまうおそれがある。その場合、車両電源が断たれるため、エンジンが停止するとともに、ブレーキ補助やパワーステアリング等が機能せず、運転操作に困難をきたす。また、この状態で事故を起こした場合、エアバッグが展開しないことがあり、被害が拡大するおそれがある」というもの。

改善策としては「全車両、イグニッションスイッチを対策品に交換する(本国メーカーに確認中)。また、改善措置を実施するまでの間の措置として、ユーザーに対して、キーホルダー等を装着しないよう依頼する。改善措置と実施時期は、決定次第連絡する」という。

「お客様には、すでにダイレクトメールで連絡を取っています。安全は最も大事なので、しっかりと対応していきます。日本のお客様をフォローします」(ハンセン氏)。このリコール問題では、バーラCEOが公聴会に呼ばれ状況について説明に追われるなどの試練に試練にたたされれている。GMは、負の時代の膿を出し切り、再生に向けた歩みを踏み出せるだろうか。

《鈴木ケンイチ》

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