


BMWのエントリーモデルとして2004年にデビューした「1シリーズ」。その魅力はまず、このクラスで唯一、FR(フロントエンジン・リア駆動)方式を採用する点にある。他のBMWと同じこの駆動レイアウト、そして前後重量配分がほぼ50:50という優れた重量バランス等によって、1シリーズではこのクラスでは希有な上質で、なおかつ自分の手足の延長であるかのような自然な運転感覚を味わうことできる。それは例えば、アクセルを踏み込んだ時に返ってくるエンジンの息吹、後ろ脚で地面を蹴り出すような加速感、ドライバーの心を読むがごときハンドリングといったものだ。
そのエンジン技術も極めて高度だ。例えばスロットル・バタフライの代わりに、吸気バルブのリフト量を可変制御して吸入空気量をコントロールする「バルブトロニック」。120i、130iのエンジンに採用されているこの技術は、元はと言えば1シリーズの前身とも言える「3シリーズ ti」に世界で初めて採用されたもの。エンジンの応答性や燃費性能の両面で高い効果を発揮するバルブトロニックは、世界中のメーカーが欲する技術だが、このクラスでは 1シリーズの他、同じBMWグループのMINIなど、まだ限られた車種でしか採用されていない。
これらの結果、1シリーズを走らせると、BMWの各モデルに共通する、極めて正確なハンドリングや一体感、そして安心感が十全に味わえる。それはとりもなおさず、1シリーズを含むBMWの全モデルにおいて、モデルごとに最適化され妥協の一切ない設計が行われていることをも意味している。BMW開発陣の徹底したエンジニアリングとチューニングのたまものと言っていい。


BMW 116i
●全長×全幅×全高:4240×1750×1430mm●車両重量:1370kg●エンジン:1596cc直列4気筒DOHC●最高出力:85kW〔115ps〕/6000rpm●最大トルク:150Nm〔15.3kgm〕/4300rpm●トランスミッション:6AT●車両価格:297万円



1975年のデビュー以来、BMWの基幹モデルであり続ける3シリーズ。2005年に登場した現在のE90型はその第5世代にあたる。歴代モデルはスポーツセダンと呼ばれるジャンルにおいて、走行性能でもスタイリングでも常に他メーカーのベンチマークであり続ける存在だ。古今東西、どれほど多くのクルマが3シリーズを目標とし、ライバルに名指してきただろうか。
現行のモデルには、バルブトロニックが投入された2リッター直4の「320i」と2.5リッター直6の「325i」。そして3リッター直6・高精度ダイレクト・インジェクション・パラレル・ツインターボの「335i」があるが、中でも注目はセダン、ツーリング、クーペ、カブリオレの全ボディタイプに設定されている335iだ。
これはBMWの代名詞とも言うべきストレートシックスに2基のターボチャージャーを3気筒毎に1つずつ装着し、同時に最高で200気圧にも達する高い圧力の燃料を極めて高い精度でコントロールしてシリンダー内に直接噴射する高精度ダイレクト・インジェクション・システムを備えたもの。もちろん吸気および排気のバルブ・タイミングを可変制御する「ダブルVANOS」も採用されている。ヨーロッパでは何度も「エンジン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれている極めて評価の高いエンジンだ。
その最大出力は225kW(306ps)、最大トルクは400Nm(40.8kgm)と4リッターV8エンジン並みだが、同時に従来のターボエンジンの常識を覆す、優れた実用燃費も誇る。BMWが訴える「レス・エミッション、モア・ドライビング・プレジャー」(排出ガスはより少なく、歓びはより大きく)を見事に体現するモデルだ。


BMW 335i セダン
●全長×全幅×全高:4540×1800×1440mm●車両重量:1620kg●エンジン:2979cc直列6気筒DOHC・高精度ダイレクト・インジェクション・パラレル・ツインターボ●最高出力:225kW〔306ps〕/5800rpm●最大トルク:400Nm〔40.8kgm〕/1300‐5000rpm●トランスミッション:6AT●車両価格:673万円
BMWのエフィシエント・ダイナミクスにおいて、軽量化は欠かせない要素の一つだ。「インテリジェント・ライト・ウェイト・テクノロジー」と呼ばれる BMWの軽量化技術は、2.5リッター直6エンジンに採用されたマグネシウム合金製シリンダーヘッドカバーや世界初のマグネシウム-アルミニウム合金製クランクケースなど、量産車では通常考えられないほど贅沢な技術や材料置換で行われている。また「135i」や「335i」の3リッター直6・高精度ダイレクト・インジェクション・パラレル・ツインターボエンジンが、パワーでは同等の4リッターV8エンジンより大幅に軽量である点も見逃せない。
その他、1シリーズ、3シリーズ共にサスペンションにアルミ合金製パーツを多用。またランフラット・タイヤを装着してスペア・タイヤを省略するなど、徹底した軽量化が行われている。同時にサスペンションパーツの軽量化は走行性能を向上させ、ランフラット・タイヤの採用は安全性の確保や資源の無駄を省くことにも貢献している。
空気抵抗も想像以上に燃費性能を左右する要素だ。そのためBMWは本拠地の独ミュンヘンに、欧州でも有数の大型風洞施設「エアロダイナミック・テストセンター(ATC)」を新設。解析の難しいリアルワールドでの空力性能を追求している。

