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Part 2 Impression モータージャーナリスト 菰田 潔が語る 「BMW ドライビング・エクスペリエンス」チーフインストラクターの肩書を持つモータージャーナリスト。年間200台以上の最新モデルに試乗しつつ、最近はスポーツ・ドライビングやセーフティ・ドライビングだけでなく、エコドライブの普及にも力を入れている
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8速AT、電子シフトは相当な贅沢

イメージニュー BMW 328iに乗り込み、電動シートのスイッチを操作してドライビングポジションを決める。フレームやレールまでしっかりとした造りのシートは、大きさも充分で肩まできちんとサポートしてくれるから安心感がある。シートベルトを装着し、左手でダッシュボードにあるエンジン・スタート・ストップボタンを一度押すとググンという低めのスターターモーター音とともにエンジンが目覚める。

8速ATのシフトセレクターは電子式になっている。この電子シフトはコンピュータとつながっているだけで、直接トランスミッションを動かすわけではない。つまり単なる電気的なスイッチなのだ。左手の親指でセレクターの横にあるボタンを押しながら手首を引くだけでDレンジに入る。このクラスで8速ATは贅沢だが、電子シフトというのも相当贅沢な装備である。

パーキングブレーキをリリースしてブレーキペダルから右足を放すとソロソロッとクリープが始まる。そのままアクセルペダルを徐々に踏み込んでいくと、ペダルの動きに遅れずに328iはスムーズに加速していく。ギクシャク感が取りきれないツインクラッチ方式のATに対して、流体トルクコンバータのメリットだろう。アクセルペダルをもっと踏み込むと、加速力はもっと強くなり、さらに深く踏み込むとシートバックに押し付けられるような強烈な加速を味わえる。走り始めればトルクコンバータはロックアップ領域が広く、ダイレクトな走行感があり、燃費にも悪影響をおよぼさない。

 

最大トルクに注目

イメージ直列4気筒、直噴、バルブトロニック、ターボチャージャーを装備した新しいエンジンの排気量は2リッターであるが、最高出力180kW(245ps)/5000rpm、最大トルク350Nm/1250-4800rpmを発揮する。ここでは最大トルクに注目したい。NAなら3.5リッターエンジンに相当する最大トルクをたった1250rpmから発揮してしまうのだから素晴らしい。さらにそのコントロール性の良さがBMWらしいところだ。つまりアクセルペダルの踏み込み量に比例した加速を実現するだけでなく、ペダルを踏み込むタイミングに遅れなく追従するのである。このダイレクト感はドライバーをワクワクさせることになる。ドライバーの意思に忠実なドライバビリティを持っているということは、長年乗っても飽きないことにもつながる。

3.5リッターエンジン並みの最大トルクを発揮するが、実際の排気量は2リッターだから、通常走行時の燃料消費は少ない。しかしエンジンの力が必要な場面ではターボチャージャーにより過給されて太いトルクを発揮できる。結果的には燃費が良くなり、走りも向上している。これがBMWが謳うEfficientDynamicsの一端なのだ。具体的な数字で示せば、旧325i(直列6気筒3リッター)と比べると、最高出力は12.5%増し、最大トルクは30%増しで、JC08のモード燃費は31%も向上しているのである。

このことは運転していても多くのドライバーが実感できると思う。あまりエンジン回転数を高くしなくても力があるから楽に走れるし、結果的には爆発回数=燃料噴射回数が少なくて済むから燃費にも効果があるのだ。さらに信号待ちなどでの停止時はアイドリングストップが自動的に行われるから、燃費の効果はさらに高まる。

 

想像を超えた直列4気筒エンジン

イメージ旧325iに搭載されていた直列6気筒に憧れるBMWのファンは多いが、この直列4気筒にも目を見張るものがある。それは他社の4気筒と違ってBMWの直列4気筒は滑らかな回転感が素晴らしいからだ。確かにBMWの直列6気筒を高回転まで回したときの芯が出たコマのようなフィールはたまらないが、そんなエンジンを作っていたBMWだからこそ直列4気筒でこれほどの驚きが得られるのだろう。4気筒エンジンのクランクシャフトの短さによるアクセルレスポンスの良さ、エンジン本体の軽さと2気筒分短くなったことによる重量バランスの良さは、ハンドリング性能を大幅に向上させている。ワインディングロードを走るときだけでなく、一般市街地走行でもその違いを感じられるはずだ。