新生カルソニックの未来コンセプトを堪能 | レスポンス(Response.jp)

新生カルソニックの 未来コンセプトを堪能

東京モーターショー2017 25 OCT 2017

カルソニックカンセイは、東京モーターショー2017において10年ぶりに出展した。見どころは3つ。未来感あふれる次世代コックピットとエネルギーマネジメント、そしてモータースポーツだ。

キャビンイノベーションとエネルギーマネジメントを一体化した「Human-Max VISION」

ブースコンセプトのひとつ次世代コックピットの提案「Cabin Innovation」では、「Human-Max VISION」と「Human-Max REAL」のコーナーを 体験・体感することができる。
超薄型コックピット
「VISION」は、AIエージェントを搭載し自動運転・手動運転にも対応するコンセプトカーのキャビンを表現したものだ。詳細機能はAR技術を駆使して紹介。展示車に“ミライスコープ”と呼ばれる端末をかざすと、車に使用されている同社の部品がどのように動作しているかを確認できる。どう見えるかは実際に会場で試してほしい。
まず目を引くのは、超薄型コックピットをはじめとした斬新なデザインのインテリア構造。前後ともにゆったり座れる空間が確保されている。センターコンソールもダッシュボードパネルから手前まで張り出すような作りになっており、足元のスペースが空いている。 半透明のマルチファンクションメーターと扇型ハンドルが周辺視界を邪魔しないようになっており、コックピットの解放感をさらに強調する作りだ。
”ミライスコープ”でAR体験している様子
AR体験では、クルマに搭載されたAIエージェントと会話をしながら自動運転や手動運転の機能、ドライバーや同乗者の好みに合わせた空調設定を疑似体験する。運転モードによって内装の色や照明が変化するところも体験してほしい。内装の色が変わるのは、表皮に使用される材料の電子化によって実現され、自動運転かどうか確実に区別できるので良いアイデアだと言える。もちろん、キャビンモードの切り替えには、森林浴をイメージしたリラックスモードといったバリエーションもあるので、純粋に内装の変化を楽しむのもいいだろう。
タッチパッドで画面を操作する様子
「Human-Max REAL」は次世代コックピットの試乗が体験できる、実車とほぼ同じコックピットモデルでさまざまなテクノロジーを体験できる展示だ。ディスプレイ式のマルチファンクションメーター、ヘッドアップディスプレイなど、今後普及が進むADAS機能やコネクテッド機能による高度化する情報を可視化するための必須アイテムを堪能できる。たとえば、インスツルメントパネルに内蔵されたアンビエントイルミネーションと、マルチファンクションメーター中央の鳥瞰表示によって、360度の状況、接近車両などのリスクを視覚的に伝えてくれる。運転中の画面切り替えや各種操作は、センターコンソールのタッチパッドで行うが、この際、画面にはバーチャルフィンガーと呼ばれる指型のカーソルが現れる。これがメーターパネルやセンターコンソール、さらに左右にサイドモニター(ドアミラー)の画面まで、縱橫に移動できる。
自動運転や自動運転支援が進化すると、ドライバーは、運転中のモードの設定やシステム状況(制御に介入しているか否か)をいかに正確に把握できるかが重要だ。通常、マルチファンクションメーターやイルミネーションを活用し、システム状態を視覚化するが、AIエージェントによるクルマと対話ができるのが理想。REALの展示ではAIエージェントとの対話も体験できる。
スライディングテーブル
画期的なのは、ナビ席ダッシュボードの大きなスライディングテーブルとストレージだ。モバイルワークやリモートワークが叫ばれる昨今、自動車の中がワークスペースになってもおかしくない。むしろ、テクノロジーにより移動や運転の意味や目的が広がるなら、このような発想は必然だろう。さすがに運転中は無理だが、高速道路のSA/PAや出先の駐車場で作業できる車は、ちょっとした移動オフィスになりそうだ。
さらに、現時点での技術を間近に見られるのが「高品質コックピットモジュール」。今年7月に発表された、メルセデスベンツ『Xクラス』の最上級グレードのコックピットを展示している。

熱交換の体験もできる「エネルギーマネジメント」

エネルギーマネジメント
同社が提案する次世代キャビンには、空調を含むエネルギーマネジメント技術も活かされている。キャビンモードに応じた空調の調整、ドライバーの好みや体調に応じた温度管理なども考えられている。これらエネルギーマネジメント(エネマネ)技術はブース内の六角形のコーナーでチェック可能だ。展示は、パワートレインの熱エネルギー交換技術、エアコンに関連したコンプレッサー、ヒートポンプ、熱交換システムといった環境エネルギー技術、EV関連のパワー制御やインバーターなどの電気エネルギー技術の3つで構成されている。
EGRクーラー
また、熱交換要素技術として開発され、EGRクーラーに組み込まれたVGフィンにも注目したい。EGRはエンジン排気ガスの一部を燃焼室に戻す仕組みだ。排気ガスの還流によってエンジン内の燃焼温度を下げることで窒素酸化物(NOx)の発生を抑えることができる。カルソニックカンセイでは、排気ガスの還流経路に独自のVGフィンを取り付けることで、効率よく排気ガスの温度を下げる技術を開発した。

モータースポーツへの情熱を象徴する
「カルソニック IMPUL GT-R」の実車展示

「カルソニック IMPUL GT-R」
最後に、カルソニックカンセイといえば、やはりモータースポーツを忘れてはいけない。カルソニックカンセイは、モータースポーツ史上世界最長:36年間のタイトルスポンサーを継続している。(カルソニックカンセイ調べ)。「くるまの中から[情熱]を変えてゆく」をテーマに、モータースポーツ活動へのひたむきな情熱を「カルソニック IMPUL GT-R」の実車を展示して伝えている。
さらに、ホシノインパル代表取締役 星野一義氏、2017カルソニックレディの白川なつきさん、天音摩夕さんらが参加するトークイベントも予定されているという。次世代技術がメインとなるブースだが、モータースポーツサポートの姿勢にはブレがないのもファンにはうれしい。

ディーゼル車用シートメタルターボハウジングを初公開

代表取締役社長 森谷弘史氏
26日に開催された代表取締役社長 森谷弘史氏によるプレスカンファレンスでは、カルソニックカンセイのこれまでとこれからのビジョンが語られた。
来年で創立80周年を迎える同社。森谷社長は「1938年の創業から熱交換、内装といった分野で自動車技術の発展に貢献してきた自負がある。5月に日産グループから独立を果たし、これを成長の機会ととらえ、中期計画で発表した2021年までに付加価値売上高7500億円を達成すべく、これからも新しい技術開発を続ける」と未来に向けた豊富を語る。
「CK-SMiTH」
そして、具体的な取り組みとして世界初となるディーゼル車用シートメタルターボハウジング「CK-SMiTH」を発表した。ダウンサイジングターボの見直しにより需要が高まるターボチャージャーは同社の得意分野である。従来からの鋳造ボディではなくシートメタル(板金)によって15%の軽量化と触媒昇温性能の向上を実現した。素材はSAS材を利用する。ラインナップには、ガソリンエンジン向けのシートメタルタービンハウジングもあるという。CK-SMiTHはブースにも展示されており、間近で見ることができる。