1997年の暮れ、史上初の本格的な量産ハイブリッド乗用車として登場したプリウス。何よりタイミングが絶妙だった。その年の秋に京都で温暖化物質排出削減をめざす第3回の国際会議が開かれたのだが、その直前に技術発表、直後に発売だったのだから、京都議定書ともども世界の耳目を一身に集めたのも当然だろう。私もすぐ買って、約15万kmにわたって愛用し続けている。その後2代目も買い、しばらく併用したこともある。でも今になってみると、我が家に居ついたのは初代。やはりクルマに対する尊敬の念からすると、初代の存在感は強烈すぎる。
このプリウスには感心させられっぱなしで、10年たっても飽きることがない。これまでの総平均燃費は1リッターあたり16.45km。毎年4カ月はスタッドレスを履くし、目一杯踏みまくりで飛ばしたことも多いのにこの成績。同クラスのセダンにくらべて、ガソリン1リッター当たりの距離は1.5倍ほど伸びる。それだけでCO2排出量が30%以上は減っていることになる。それに案外速い。
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高速道路の疾風にはなれないが、市街地でちょっと加速するとき、ちっともエンジンが力んでないのに、モーターの底力でフイッと行けるのは異次元の感覚だ。回生ブレーキも効果絶大で、まだ新車からのパッドが半分近くも残っている。そのぶん粉もまき散らしていないわけで、二重三重に「いい子」なのだ。
だから初代プリウスは、T型フォード、VWビートル、BMCミニと並んで、クルマ史に燦然と輝く記念碑だと思う。 |
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熊倉重春|モータージャーナリスト
東京・焼け野原の戦後第一期生。25年間クルマ雑誌に勤めて何でもやったので、フリーのジャーナリストになった今でも何でもやる。いや、クルマのことなら何でも首を突っ込みたがる。今最大の関心事はエネルギー問題。 |
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