始めて日本車が時速200km/hの壁をアウトバーンで破ったのは、ほんの20年くらい前の出来事。当時を振り返ると、ステアリングを握る手のひらは汗でにじみ、スロットルを踏み続ける右足は恐怖のあまり痙攣していた。しかし、その後20年にわたる日本車の進化はめざましい。一気に化石時代から飛び出してきたみたいだ。
2007年春、フランクフルト郊外のアウトバーンで私はLS600hのステアリングを握っていた。スピードリミッターが働く250km/hにすでに到達している。650psではなく、650Vで駆動するハイブリッドのスーパーサルーンLS600hは、静かさと速さを内に秘めたある意味で「スーパーカー」だ。
アウトバーンは速度無制限が原則。ここでは自己責任において速度を決められる。速度無制限の意味は「速度の自由化」。自分の技量とクルマの性能と責任で決めるものなのだ。 |
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「速度は自由でもエネルギーは使いたい放題ではいけません」と語るのはレクサスブランドのハイブリッドを開発する定方さん。電気CVTのおかげで多段ギアがなく、加速感は静かなジェット機のようなスムーズさだ。スロットルを戻すと新幹線と同じようにエネルギーが回生される。時速250km/hから回生されるエネルギーは凄い量だろう。
公表される0-100km/h加速データは5.5秒(日本仕様は多少ギア比が低い)、しかし実際の加速感は数値では語れない異次元のもの。リミッターが作動するものの、メーターの針は270km/hで止まった。
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清水和夫|モータージャーナリスト&レーシングドライバー
1954年東京都生まれ 1972年にラリーデビュー以来、レースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍するいっぽう、自動車ジャーナリストとして活動。ドライビングを科学的に分析する能力と、シャープな評論で多くの支持を集めている。
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