トヨタのHV(ハイブリッドビークル)は3つのグループに分けられる。プリウスに代表される「エネルギー効率徹底追求型」。レクサスGS430hに代表される「エンジン排気量補完型」。そしてクラウン・セダンに採用されている「シンプル&ローコスト型だ」。
過去10年におよぶHV市販の経験からトヨタは、その長所も短所も熟知している。エネルギー効率を徹底的に追求するハイブリッドシステムにはコストがかかり、車両重量も増える。効率を上げようとすると高価になり、あるところからはコストの見返りが非常に小さくなる。そこで生まれたのが、ブレーキング時のエネルギー回生/アイドリングストップ/発進時のモーターアシストの3点に絞り込んだ簡素なシステムだ。
じつは、この3点こそはHVのいちばんオイシイ部分であり、最小限のコストとシステム重量でこれを実現しているのは驚きだ。ゴー/ストップが多く巡航速度が低い市街地で大きな燃費低減効果を得られるよう、36Vの小型バッテリーと小型のモーター兼発電機を使い、アイドルストップ時のエアコン駆動も実現している。 |
 |
法人需要が圧倒的に多いモデルだけに、このシステムの効果は燃料費の節約となって確実に現れなければならないが、ユーザーを取材すれば、それが間違いなく達成されていることがわかる。派手な技術は使われていないが、2点差の9回裏に登板するクローザーのように、黙って確実な仕事をする名選手である。
|
 |
 |
 |
|
 |
牧野茂雄|モータージャーナリスト
1958年東京生まれ。日本大学芸術学部卒。日刊自動車新聞社記者、三栄書房編集顧問、同社刊『ニューモデルマガジンX』編集長を経てフリーランスジャーナリスト活動を開始。自動車専門誌および国内外経済誌への執筆のほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動中。
|
|
|