---- 今回、ヘルプネット機能の標準搭載もそうですけれども、新型DCMの果たすべき役割と重要性が大きくなったと感じています。
友山 そうですね。当初から通信モジュールというのは、G-BOOKのプロジェクトにおいて重要な位置を占めていました。今回、新型DCMの大きな特徴は、モジュール自体がユニットとして自立しているという点があります。
---- 具体的には?
友山 DCMの中に自立したCPUが入っていて、通信機能のモジュールほかに、緊急通報モジュール、セキュリティ通報モジュールが入っています。それらをCPUがユニット内で自立管理しているのです。
---- DCM自体がホロニックな構造(※)を持っていますね。
友山 特にエアバック連動型のDCMは自立性が高いです。エアバック連動型DCMに緊急信号が入りますと、カーナビなど車載器が壊れていても自動通報します。
これはどういう事かというと、緊急信号が入る事故直前までの500ポイントほどの位置情報が(DCMに)保存されていて、それをセンターに通報します。これにより事故直前までの位置と走行軌跡がわかりますから、たとえ事故時の位置情報が車載器から取れなくても、居場所が特定できます。また事故発生までのおおよその速度もわかりますから、高速道路で起きた事故なのか、どの程度の(スピードで衝突した)被害なのかの予想もできて、センター側で適切な対処が可能になるのです。
新型DCMは衝突試験をクリアーしてますから、カーナビよりも事故時に損傷する確率が低い。その点でカーナビに依存しない自立性はシステムの信頼性の上でも重要なのです。
---- カーナビと分離していることが、大きなメリットになっているのですね。
友山 それはセキュリティ分野でも有効です。新型DCMはクルマの内部に取り付けられていて、ECUと直結してセキュリティ信号を受けている。カーナビとは関係ないので、盗難された時にDCMの監視機能を取り外すことが困難なのです。
---- 他社ではテレマティクスの"端末"はカーナビとイコールの関係性にありますが、G-BOOK ALPHAはむしろ、新型DCMこそがテレマティクスの"端末"に見えます。
友山 その通りです。我々の中で第一世代、第二世代、第三世代といった(テレマティクスの)定義は様々なのですが、共通認識としては、「第三世代の定義はクルマの中に自立制御された通信モジュールがあること」になります。
WiLLサイファが代表例ですが、第二世代G-BOOKの通信モジュールはまだカーナビに付随し、補完する通信機だった。しかし、G-BOOK ALPHAに発展する中でDCMが自立性を持ち、カーナビに依存しない機能やサービスを実現しました。カーナビと距離を置き始めた。それが我々の第三世代の考え方と言えますね。
---- ホンダ、日産ではカーナビの延長線上、いわゆる「エンハンスド・ナビ」に第三世代テレマティクスを定義していますけれども、トヨタの定義は主客がまったく違う。DCMという通信機能はカーナビの補完もするけれども、位置づけ的にはカーナビより上位階層にある、ということになる。
友山 それはWiLLサイファの頃から主張していたのですけどね。「カーナビも(テレマティクスの)一機能である」と。しかし、当時は物理的には通信モジュールがカーナビに隷属する形で、実体が伴っていなかった。理解してもらうことが難しかったのだと思います(笑)
今回の新型DCMもカーナビとの密接な連携はしていますが、依存度はずいぶんと低くなっている。単独で位置情報の取得もできますし、今回、通話機能も盛り込みました。
---- 「通話機能」の存在は大きいですね。これによって携帯電話を接続する必要性が大幅に減っている。
友山 携帯電話の番号で電話を受けたいお客様向けにBluetooth接続機能は用意していますが、日常的なデータ通信や緊急通報時の通話で「ケータイを繋いでないから使えない」という状況にならないようにしています。それに一般の通話やオペレーターサービスを使う際も、DCMの通話機能を使う方が音質がクリアーなのですよ。
---- 料金とサービス形態はどうなっているのですか?
友山 DCM用の番号契約をする形になります。まず多くのプランで、初年度基本料は無料です。この場合の初年度は新車登録日から初回の12ヶ月点検月の末日までとなります。
その後はデータ通信利用のみの契約ならば、年間12,000円、月額換算だと1000円。ここにデータ通信定額利用料金が含まれます。一方、音声通話付きのDCM契約では、(KDDIの)au携帯電話とのセット利用ならば、基本料が年間18,000円、月額換算だと1,500円です。これにデータ通信利用料定額はもちろん含まれます。通話料は従量制で1分73.5円ですね。
---- 通話料は少し高いですね。au以外の携帯電話を契約するユーザーの、通話付きプランはどうなるのですか?
友山 まず初年度に年間21,000円の基本料がかかります。その後、継続利用する場合は年間33,000円の基本料がかかります。また契約時には事務手数料1,575円が必要になります。従量制の通話料は1分73.5円で同じです。
※生物学・コンピューターサイエンス用語。「階層構造の中間段階にあって、一つ下段には全体として、逆に一つ上には個として働く実体」を指す。システム論における理想的なモデルのひとつ。
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《インタビュアー=神尾 寿》
《写真=浅見 洋》
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