友山 トヨタは日本緊急通報サービス「HELPNET」に20%以上出資して参加しましたけれど、ユーザーが負担するサービス利用コストが高いことと、車載通報機が後付けであることで、一般ユーザーにまで普及しているとは言えない状況にあります。G-BOOKには日本に緊急通報サービスを普及させるという願いが、根幹にあります。
---- しかし、緊急通報サービスの普及、安全技術としてのテレマティクスという位置づけは、第二世代G-BOOKでは当初から前面に打ち出されていませんでした。
友山 言い訳を言ってしまいますと、環境が整わなかったのです。まず通信モジュールでは、はたしてそういう(事故時でも作動する)ものが作れるのかという課題があった。またトヨタはグループ会社にKDDIがいますけれど、クルマの会社が安全のために通信サービスをやろうと思いましても、それがビジネスモデルとしても成り立つのだろうか、という不安もありました。
---- 当初から芯を貫くコンセプトは『安全』にあった。しかし、それを顕在化させるのに時間が必要だったという事でしょうか。
友山 まずは車載できるDCMを作る必要があった。その最初のステップが、WiLLサイファに積んだ初代G-BOOKです。ただ、この段階では(安全技術としての)サービス開発まで踏み込めず、どちらかというと携帯電話のコンテンツサービスがクルマ化したようなものだった。
2003年でG-BOOKをWiLL以外のクルマに広げる時に、安全までにはいけなかったのですけれども、セキュリティサービスに踏み込みました。トヨタの高級車は盗難被害に遭いやすいという状況もありまして、「安心」につながるセキュリティを第二のステップにしました。その頃からG-BOOKというのは、当初の目的を素直に訴求しました。
---- そう考えると、G-BOOKの本来の姿は2003年からスタートしていると言えそうですね。そして、まず安心からスタートしたコンセプトが、ユーザーや社会のニーズにも合致した。
友山 実際、2003年G-BOOKのお客様は「盗難抑止」を重視していただいていて、契約継続率も高い。ここについては認められてきたのかな、と思います。G-BOOKのセキュリティサービスが効果を上げる事例も増えています。一般的に自動車盗難被害では車両発見率が低いのですが、G-BOOK装着車では、非装着車の4倍以上の発見率があります。
----- 第二世代G-BOOKの段階でも、「安全・安心」という本来のコンセプトに向かって進歩しており、今回のG-BOOK ALPHAでは新型DCMを採用しているわけですが、ここで大きく飛躍したという事ですね。
友山 テレマティクスというのは中長期的な戦略を持って進めるべきものですし、G-BOOKはこれまで、そして今回のG-BOOK ALPHAでも段階をおって成長しているのだと考えています。
WiLLサイファではDCMが接続していたのはカーナビでした。ここでできることはコンテンツサービスが中心でした。しかし、2003年モデルでは高級車向けはECU(Electronic Control Unit)と接続し、セキュリティサービスが可能になりました。また、この間に普及のノウハウや、マーケットからのフィードバックも得られました。特にお客様のご意見は真摯に受け止めました。それらが結実したのが、G-BOOK ALPHAです。
----- なるほど。私が今回のG-BOOK ALPHAで感じた納得と言いますか、"腑に落ちた"印象は、G-BOOKの中長期戦略の方向性が、氷山の一角ではなく、その姿を大きく捉えられるようになったからと言えそうです。
《インタビュアー=神尾 寿》
《写真=浅見 洋》
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2005年10月14日セミナー開催 |
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